花コリ2019大阪会場トーク録:リレーアニメーション『ラストメッセージ』

リレーアニメーション『ラストメッセージ』

2010年から始まった、多数の作家がリレー形式で映像をつなぎ、作家間の交流を図る「インディ・アニフェスト」の恒例プロジェクト「リレー・アニメーション」。2018年は、同年4月の「花コリ」をきっかけに関西から小川泉氏が参加し、他6名の日韓の作家と共に、韓国の音楽家タマ・ローズ氏とコラボレーションして、ミュージック・ビデオ形式の作品を制作しました。上映後のトークでは、制作のプロセスや、「インディ・アニフェスト2018」にゲスト参加した際の感想などを語っていただきました。

日時:2019年4月7日(日)15:00~ 韓国短編プログラム2「愛のカケラ」終了後
場所:PLANET+1
ゲスト:小川泉(リレーアニメーション『ラストメッセージ』『夢路/片足ズボン』監督)
    チェ・ユジン(インディ・アニフェスト執行委員長)

リレーアニメーション『ラストメッセージ』は花コリ2019韓国短編プログラム2にて上映されます。



チェ・ユジン(以下、ユジン):他のプログラムでは司会者として登壇されていたのに、作家として登壇されるのは緊張するということですが…(笑)
簡単に自己紹介からお願いします。

小川泉(以下、小川):今のプログラムで最後に見ていただいた『ラストメッセージ』を韓国の作家5人と日本の作家2人の合作で作ったんですが、その3番目のパート35秒間を作りました。小川泉と申します。よろしくお願いします。

ユジン:私も簡単に自己紹介を。私は韓国インディペンデント・アニメーション協会で働いていて、協会で「インディ・アニフェスト」という映画祭をやっているのですが、その映画祭のフェスティバルディレクター、実行委員長をやっています。それ以外にも韓国のアニメーションの配給とか、インディペンデント・アニメーションに関わる仕事を毎年やっています。
簡単にリレーアニメーションのことについて説明をすると、このリレーアニメーションは10年ぐらい前からやっていて、今年で10回目になります。最初に企画した理由は、アニメーションを作っていると寂しいという話を作家たちがよくするので、一緒に共同制作をしたら、仲間をつくれたら、寂しくないんじゃないか、映画祭で会うだけじゃなくて一緒に作品をつくれるきっかけになればということで、このプロジェクトを始めました。最初は韓国の作家だけでずっとやっていたのですが、5年ぐらい前から海外の作家も参加することになり、その時にテーマを「平和」にして、このテーマはどこの国でも同じ感覚、いろいろな考え方があると思うので、このテーマにして日本や中国の作家さんと一緒に作ってきたのですが、2年前は、テーマは「平和」で同じでしたが韓国の現代詩人の一人のシム・ボソン氏とコラボレーションし、彼の『休日の平和』という詩を使って制作しました。
去年(2018)はその時の経験を生かして「平和」というテーマにこだわらず、音楽、ミュージシャンと一緒にコラボレーションして作ってみようということで今回上映したリレーアニメーションができました。
タマ・ローズというミュージシャンとコラボレーションしたのですが、彼はエレクトロニックミュージックを作っている人で、日本でもたまに音楽の仕事をもらって仕事しています。
去年の花コリ大阪会場で初めて小川さんにお会いして、その時にリレーアニメーション一緒にやってみないかと声をかけ、参加していただけることになりました。

タマ・ローズ「ラストメッセージ」視聴ページ

小川:ここ(PLANET+1)の上の階にCO2運営事務局(CINEASTES ORGANIZATION OSAKA)という場所がありまして、大阪を拠点にした映画制作のターミナルになるような活動をしている事務局なのですが、そこで私は一昨年からボランティアスタッフをしていて、その関係で去年の花コリ大阪会場のスタッフをしていたところ、ちょうどその時に2018年のリレーアニメーションを合作するメンバーがまだ決まっていないからやってみないかとコーディネーターの三宅さんとユジンさんに言っていただいて、絶対やります、ぜひやらしてくださいと言って、参加しました。

ユジン:音楽は既に決まっていたのですが、それをどう表すかというのが1回目の一番最初の打ち合わせであったのですが、小川さんは日本にいたので、スカイプでやりました。

小川:韓国の作家の皆さんは一カ所(KIAFAの事務所)に集まって、そこと大阪の私と関東のコーディネーターの三宅さんと3画面でスカイプをして、音楽を聴いてどういうイメージかなぁというお話をして。その時に韓国は雨が降っていて、作曲をされたタマ・ローズさんが、ちょうど韓国でその日降っていたような雨をイメージして作曲したとおっしゃってて、見ていただいたら分かるように雨のシーンが多いのですが、皆が共通のイメージとして雨というのがあって制作したという感じです。

ユジン:最初、ミュージシャンの話に偏らないようにしようと言ってたんですが、結局、最後できあがったのをみたら、別れの話と雨のシーンが多くなっていて…。

小川:キーワードとして「別れ」というのも、その会議で出ちゃって、けっこう皆、内容も偏ったというか…。

ユジン:皆、それぞれ自分のスタイルを生かして、イメージも全部違った雰囲気になったのでそれは良かったと思います。

小川さんは、今回の作品のイメージを作るにあたって、前の作品と違ったと思うんですが、今回このスタイルを選んだ理由を教えてください。

小川:自分で作ったアニメーションは、これ以前に3本しかなくて、その全てが白黒だったんですよ。立体アニメーションで真っ白な世界、光と影しかないものと、今日の午前中に関西在住作家プログラムで上映した『夢路/片足ズボン』は、白い画面に鉛筆の線だけで作ったもので、色のあるアニメーションというのをやったことがなかったので、それに挑戦したいなという気持ちがあって。音楽自体もキラキラしたイメージだったので、白黒でやるよりは、色のきれいなアニメーションにしたいなと思いまして、背景を水彩で描いて、複雑な色にしたかったというのがあって、ああいう感じになりました。
ユジン:リレーアニメーションは、最初10年ぐらい前は1人10秒から15秒ぐらいだったのですが、今は30秒ぐらいになっているのですが、今までに自分が試したことのないスタイルや素材を使って気軽にできるのがいいところだと思います。

小川:自分のパートは短くても、皆さん合作したら一作品になるから、やったことがないことをちょっとやってみようかなと挑戦できるというのがありました。

ユジン:前に参加した作家は、自分のパートはたった10秒でも自分のプロフィールに作品として書いて1行増やせるからという考えで参加した人もいます。今までやったことがないものを試すことができる、というのがリレーアニメーションの醍醐味でもありますね。

小川:リレーアニメーションで面白かったのは、自分のパートの最初のフレームと最後のフレームを前後の順番の作家と相談して、絵が繫がるように仕向けていったことです。私の前の作家の方は韓国の方(チェ・ソヒョン)だったので、三宅さんにチャットで通訳してもらいながら、私はこの絵で行きたいと思いますが、ソヒョンさんはどうでしょうか?みたいな、ちょっと気を遣いながら絵と通訳で会話しながら決めて行ったのが新鮮でした。私の後ろは日本の作家で戸張茉衣子さんという方なんですが、その方とは割とフランクにやり取りしながら作りました。

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ユジン:順番をどう決めてるか気になると思うんですが。

小川:最初のスカイプの時に、くじ引きで決めました。私は画面の向こうにいて、韓国の皆さんの前にある机に紙が置いてあって、小川さんどれにしますか?って言われて、じゃあ右から何番目みたいな(笑)、それでみんな引いて決まりました。

ユジン:いつも一番目の人と最後の人が困るんですが、くじ引きでやってます。
作品みてたら、「夢路/片足ズボン」のキャラクターとリレーに出てくるキャラクターが少し似てるなあと思ったんですが……。

小川:どうなんですかね。「夢路/片足ズボン」は、私の友人の「片足ズボン」というミュージシャンの曲のミュージックビデオで、そのミュージシャンの男の子に実際動いてもらったものを実写で撮影して、それをなぞって描いてアニメーションにしたものなので、完全にその子がモデルなんですよ。リレーアニメーションの私のパートは、同じ手法でやりたいと思ってたんですが、誰もモデルやってくれないから家に椅子とカメラを設置して、自分で動作をして撮影しました。なのであれは私がモデルになっていて、それを男の子に置き換えたという感じにしてまして、似てるかどうかは分からないんですけど、似ちゃうんでしょうか。自分の絵だから似ちゃったのかもしれないし……。

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ユジン:私、実は人の顔をあまり区別できないので(笑)、その問題かもしれませんが、実写だと難しいからアニメーションはいいですね。あまり変わらないし、服も着替えないし、すごい好きです(笑)。

さっきから名前出てる三宅さんを簡単に紹介したいと思います。

小川:あちらに立っているのがコーディネーターの三宅さんで、三宅さん自身もアニメーターでいらっしゃいます。

ユジン:10年以上前にワーキングホリデーで韓国に来て、うちの協会で働いていて、その縁で今までずっと花コリの仕事を担当してるんですけども、リレーアニメーションのコーディネーターとして日本語と韓国語の通訳もされています。

小川さんは映画祭の時に実際に韓国に行って皆さんの作品を見たと思うんですが、その時の感想を教えてください。

小川:このリレーアニメーションに参加することで、韓国のインディペンデント・アニメーションの映画祭「インディ・アニフェスト」に一週間滞在させていただけて、もうずっとアニメーションに浸った生活をしてたというか、映画祭会場で上映を見たり、韓国のアニメーションスタジオをたくさん見学したり、満喫させていただきました。「インディ・アニフェスト」自体が、作家の方々自身が作ってる映画祭だというのが刺激的で、司会も作家さんがやってらっしゃって、自分たちで上映したいから自分たちで運営しちゃうっていうのが、すごく熱意を感じたというか、いい映画祭だなぁと思いました。

ユジン:「インディ・アニフェスト」という映画祭がなぜ作られたかというと、2005年に始めたんですが、その時期は韓国の作品がどんどんできあがっていて、アニメーション学科が90年代の中盤からできたので、2000年代の初頭には学生作品が多くなったんですが、韓国の作品を紹介できる場所があまりなくて、日本だとしたら例えば広島の映画祭は国際映画祭なので、日本の作品をなかなか紹介できないじゃないですか、なので自分たちの作品を見せる場所をもっと作ろうということで、「インディ・アニフェスト」を作ったので、元々韓国の作品だけの上映会をやろうということで韓国作品のコンペしかなかったんですが、3年前からアジアコンペ部門ができたのでアジアの作品も紹介しています。
なので司会も作家さんがやってるから、今は落ち着いて司会できる作家さんがやってますが、前はすごく作家っぽい人がやっていて、進行がめちゃくちゃだったので(笑)うちの映画祭は日本でいう文化庁にあたる韓国体育観光部から支援をもらってるんですが、その担当の公務員たちが来て「こんなめちゃくちゃな司会は見たことない」って言われて、でもそれが印象に残ったみたいで支援金も次の年から上がったし、良かったと思うんですが、そんな風にして作家がやっていて、上映する作家が来て、何か手伝うことはないかと聞かれたり。パーティーでBBQするんですが、全部作家が用意して。だいたい若い世代の作家が多いから、40代50代になると若い世代とコミュニケーションするのが難しいから、その世代がやることなくて率先してBBQを焼いていました。若い世代は皆、座って食べてて。韓国では年齢差を大切にするので、韓国では珍しい風景になります。

小川:上下関係がすごく厳しいんですよね。

ユジン:そうですね、それなのにうちの映画祭では、若い世代と話せることないからと言って代わりにBBQを焼いていました。

小川:飲み会でも、会う人会う人みんな作家さん?というくらいに多くて、皆でやってる感じがして。
今日午前中に上映した関西在住作家プログラムは、私が関西のアニメーション作家の皆さんにお声かけして作品を出していただいたのですが、インディ・アニフェストで感じた、作家自身がまとまって行こうぜ!みたいなエネルギーが企画の動機になっています。以前は私自身と作家の友達やお知り合いとの繋がりが一方通行だったというか、それを関西という括りで一回、結託じゃないですけど、集めてみたいなという思いがあって、作家さんに参加していただきインディ・アニフェストみたいに盛り上げていけないかなと思い、企画しました。

ユジン:場をつくることは、すごく大事だと思います。関西でもこのように毎年1回くらい関西の作家が集まって、いろんな話をしたり、自分が今何を作っているのか、今回の作品はどんなものを考えているのか、など、いろんなことを話して自分1人じゃないという、その感覚というか。

小川:最初にアニメーターは1人で取り組んで孤独だから、というのはありますね。

ユジン:夫婦で一緒に制作していても寂しいという人もいるので、それはびっくりしました。作業は寂しい仕事だと思うので、一つ一つ作るのは大変だと思うし、このように集まって話をしたり作品を見たり、これからもきっかけを作れたら、花コリがそういう場になってもいいんじゃないかなと思いました。去年からいい企画を作っていただいて、司会者の方が向いてますね(笑)。

最後にこれからの計画をお願いします。

小川:去年インディ・アニフェストのリレーアニメに参加するまでは、自分の仕事が忙しいとか、いろいろ言い訳をして自分の作品を全然作らずにいたんですが、ヒマになってからやろうかなと考えてやらなかった期間が大学出てから9年とかになるんですが、インディ・アニフェストに参加した時に、日本のアニメーション作家の水江未来さんがゲストに来られていて、大学院を出てしばらくは1年に1本作ることを目標にしていたという話をインタビューでされていて、その時点の自分の作品を形にして、それを持ってその年のいろんな映画祭に出向いてというペースを最初は作ってたというお話を聞いて、私もそれをできるようになろうと考えています。自分の作ろうとするものが例えば自分のペースで3年かかるものだったとしても、とりあえず1年で区切って、いろいろ言い訳あるけど、もう今年は1本作るって決めて、それが自分のその時点の実力なので。今、企画を考えていて女性の話を作りたいなと思ってます。12月までに(笑)。

ユジン:来年の1月公開で。

小川:う~っ、はい(笑)。何とかやりたいなと思ってます。

ユジン小川:ありがとうございました~!

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<追記>
トークの時に話題にするのを忘れていましたが、実は2018年9月映画祭当日、その前に関西を直撃した巨大台風の爪痕により関西空港が閉鎖され、いつ復旧するか分からない状態で、小川さんの乗る飛行機が飛ぶかどうか渡韓数日前まで分からない状態でした。最悪の状況に備え、広島空港または名古屋の空港からの飛行機も抑え、数日間、航空会社のサイトとにらめっこしていました(苦笑)。
幸いにも当日は、関空から予定の飛行機に搭乗することができ、小川さんは無事にソウルに降りついたのでした。

2020年のリレーアニメーションプロジェクトへの参加募集は既に締め切ってしまいましたが、2021年も、例年通りであれば2月~3月頃、募集をかけますので、リレーアニメーションにご興味のある方、やってみたいという方は、その時にぜひ応募してください!
(三宅)



<過去のリレーアニメーション記事>
リレーアニメーション『The Water ~ 船頭多くして ~』
リレーアニメーション『11色の平和』
リレーアニメーション『PEACE ROAD』映画祭GVレポート
リレーアニメーション『休日の平和』
リレーアニメーション『ラストメッセージ』2018映画祭レポ
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