『Dancing Frog』キム・ジンマン監督インタビューby KIAFA

キム・ジンマン監督インタビュー@インディ・アニフェスト2018
2018年9月13日(木)

KIAFA:こんにちは監督!今回のインディ・アニフェスト2018で見ることができる作品『Dancing Frog/춤추는 개구리』について紹介お願いします。

監督:一言で整理するのは難しいですが、「簡単に見ながら楽しむこともでき、複雑な謎を探しながら見ることができるようなパペット・ストップモーション・アニメーション」と言えば、作品紹介になりそうですね。



DancingFrog.jpg
『 Dancing Frog /춤추는 개구리』
2018 / 10:20 / Puppet
あらゆるものは、つながっている。

Director’s note
互いがつながっていることを悟った瞬間、私たちのあらゆる動作は、ダンスになる。


★花コリ2019 韓国短編プログラム1で上映


Dancing frog_ trailer from HUMUHUMU on Vimeo.





 
KIAFA:『Noodle Fish』以降、久しぶりに作品を制作されましたが、その間、どう過ごされていましたか?

監督:『Noodle Fish』以後、約5年ぶりの作品ですが、実際の制作期間は3年ほどかかりました。『Noodle Fish』以後、2012年までは、ずっと映画祭を歩き回るのに忙しくて。2013年にカエルのシナリオを書き始め、制作にすぐ突入しました。それで制作支援を受けようとしたけれど、2013年と2014年と続けて断られ…。テーマや作品の雰囲気が暗すぎる上に、私が考えていたカエルのキャラクターが気持ち悪いというのが理由だったと思います。でも、私は一つのことにハマると、他のことに変えることができなくて。ずっと心に残っているため、他のシナリオに集中できなくて。
さらに、2014年から2015年初めまで体調が良くなくて、手術を何回かする必要があって作品に集中しにくくて。鼻に問題があったんだけど、シリコン作業をする時に出る化学的な臭いが大変でした。体調がある程度回復した後に本格的に作業に没頭し始めまして。
2015年に、今度こそは絶対支援を受けなければならないと考え、キャラクターを可愛く変え、作品の雰囲気も少し明るく修正しました。シリコンキャラクターもゼリーのように透明でパステルトーンで親近感が出るようにつくりました。そのおかげか、支援を受けられることになり、すぐに撮影に入っていきました。支援を受ける前に、背景に使われるキャラクターを制作するのに約1年程度かかり、支援を受けた次の撮影した期間が1年、グラフィック作業と編集に1年かかりました。合わせれば、3年近く制作したようですね。

KIAFA:体調がすぐれなかったとは、心配ですね。今は健康状態は大丈夫なんですか?

監督:撮影前までに、ほぼ回復したんですが、今は非常に健康的な状態です。『Noodle Fish』を撮る時には無理して夜遅くまで作業したりしましたが、今回の作品は、体のことを考えながら無理しないようにしようとしました。その前にも体調管理に気を使ってはいましたが、今は歳をとったからか昔のようにはせず、12時前に寝ようと努力しています。

KIAFA:3年間制作しながら、とても勤勉に作業されたようですね。

監督:週に6日間、一日に6時間程度は作業に集中しました。週に6日の作業に加え、高校生に彫塑を教えているのですが、学校で丸一日講義をしている場合があり、そのため作業ができなかったこともあり。それ以外の時間はすべて制作に費やしました。

KIAFA:制作期間中に、一度もシナリオや計画を修正しようという考えがなかったか、気になりますね。
制作の際、事前に計画をされる方ですか?

監督:はい。最初に一度決まったら、シナリオ通りにやります。始めと終わりを決めておいて、中間に入る話を組み立てていく方法でシナリオを書いています。確実な終わりを決めてシナリオを書いているので、仕事の途中で内容が変わることがありません。労働条件や予期せぬ状況に応じて細かい要素が変わりますが、全体的な脈絡は変わらない。それが私のスタイルのようです。

KIAFA:『Dancing Frog』の作品を見ても、かなり努力されているのが感じられました。制作中、苦労した点はありましたか?

監督:もちろん非常に大変でした。まず250匹のカエルを作るために長い時間がかかりました。アーマチュア(人形の骨組み)、眼球などをいちいちすべて作るんですよ。ガスマスクを使うには使ったけれど、シリコンのきつい臭いのために苦労もしましたし。合わせて一年くらいかかったと思います。セットを制作し、撮影することも容易ではなかったけれど、グラフィックスの操作と編集をすることも大変でした。
通常ストップモーションアニメーションは、キャラクターを支える固定装置を簡単に消すために、カメラを固定して、被写体を動かすんです​​よ。でも、『Dancing Frog』の場合は、カメラとキャラクターが一緒に動くように撮影をしたので、一枚一枚全て消しました。そしてカエルをシリコンで作っているので手袋をはめて動かすんですが、時間がかかって、たまにカエルをお風呂に入れたりもしました。お風呂に入れても残っている垢やホコリは、やはり一枚一枚全部消しました。

KIAFA:シリコンの話が出てきたのでお聞きしますが、シリコンを使った特別な理由がありますか?

監督:シリコンは、実際、ストップモーションでよく使われる素材ではないです。通常、手のような人体を表現するときに使うけれども、シリコンをメインには使用しません。私がカエルについてのシナリオを書きながら、最初に浮かんだ材料がシリコンでした。メインで使用するのに複数の欠点があったけれど、シリコンがカエルの皮膚を最も適切に表現することができると思いました。また、他の人があまり試していないから挑戦してみようという考えもありました。
シリコンも種類が多いので、どのような製品をどのような割合で使えばいいか、国内で販売されているシリコンを全部買って、カエルの模型を作って実験もしてみて、比較もしてみました。金銭的な投資をたくさんしましたが、本当にたくさん勉強になりました。

180915KJ_18.jpg
2018年9月映画祭期間中に花コリスタッフがスタジオ見学した際に、見せていただいたカエルの型



KIAFA:そんなリスクを冒しながらも、カエルを素材にしようとした理由はありますか?

監督:元々、カエルを好きだったし、その時、私はカエルにハマっていました。『Noodle Fish』を制作する際、魚と一緒にカエルを家の屋上で2年ほど育ててもいました。だから『Noodle Fish』にも登場してるでしょう。


B09_noodlefish01.jpg
「Noodle Fish/でこぼこ魚/오목어」
2012/9:46
料理用のそうめんを積み上げ、場面ごとに麺を押し出して模様を描いたピンスクリーン・アニメーション。「大人になるには、水の外へ行かなきゃダメなの?」小さな水たまりに住む主人公へ疑問を抱かせ、消えてしまったおたまじゃくしたち。その時から、水の外へ向けた彼の旅が始まる。




監督:どうしてもカエルにしなければならなかった理由は、『Dancing Frog』のシナリオにぴったり合っていたからです。作品を見ると、キャラクターが絡まった線を成している場面があります。そのシーンは、このシナリオの初期に浮かんだイメージですが、そのシーンに最適な素材がカエルだと思いました。
以前にTED放送中にニューロンの脳科学者ラマ・チャンドランの講義を見たことがあるんですが、「完全に独立した自我はない。すべてのものはつながっている。」という内容でした。人間は、皮膚がなければ、互いに分離感を感じず、共感能力がより高くなるというのです。例えば、人間の皮膚が他人と自分がつながっているという点を遮断するということでしょう。人間との間の分離感は、肌のために誘発されるという内容の講義でした。
ところで、私はカエルが他の動物に比べて薄い皮膚を持っていると思いました。カエルのドキュメンタリーを見たことがあるけれど、ある場面で2匹のカエルがしばらくの間、互いに向かい合っているだけなのに、片方のカエルが非常にお腹が空いている、ということがわかるんだそうです。だから他のカエルが無精卵をあげながら空腹を満たさせて助けます。カエルたちが共感能力に優れた動物だと思いました。だからカエルに魅了されたんです。また、おそらく私が『けろっこデメタン』世代(韓国ではKBSで放送)だからかもしれません。 (笑)

KIAFA:では『Dancing Frog』は、「共感」に関するお話なのですか?
私たちが日常的に考えている「共感」というものをかなり独特な世界を作り出して表現されているようです。特に暗闇の中で、カエルで構成され、白く長い線をカエルが行ったり来たりしているのが非常に印象的です。

監督:アラスジにも書かれているけれど、意識として、私たちはすべてつながっているということを表現したかった。主人公は巨大な蛇を見て恐怖を感じ、大きな木に逃げてジムグリガエルの足に当たって気絶している。主人公が目を覚ます空間は一種の別の次元ですね。ここで、主人公は逃げながら出会った他のカエルに一つ一つ移入することになります。自分を足で蹴ったジムグリガエルにまで移入をね。
『Noodle Fish』で主人公のでこぼこ魚は、自分が属している次元から別の次元を理解することができませんでした。この作品の主人公も、自分が実際に経験した空間では、他のカエルを理解できませんでした。気絶して入りこんだ別の次元では、それぞれのカエルたちが経験した出来事を、その上から見下ろすことができるようになりますね。その別の次元の空間を、私は「意識の空間」と名づけました。このアイデアは、物理学者ファインマンの書籍で得ました。ファインマンによると、私たちは主体的な視野での時間に基づいて出来事を経験すると考えます。しかし、これを別の次元から見れば、すべてのことは、すべて決まっているものであり、私たちは、一連の時間と出来事を迎えるだけだと考えることができます。すべてのことはすべて決まっていて、自由意志もないんです。作品の一連の線は、各カエルの決められた運命線です。そして各ラインが交差する点は、お互いが出会う地点です。主人公のカエルは、その線を行き来しながら、他のカエルの人生を感じ共感するのです。

KIAFA:主人公のカエルは最後にお年寄りのカエルに共感しながら悟りを得る表情をします。そしてその後、気がかりなことを誘発する場面が続きますが、どのような意図で入れようとしたのか、聞いてもいいですか?
 
監督:主人公は意識の空間でジムグリガエルにぶつかり、気絶した場所に行きます。そこから、ある年寄りのカエルが自分を生かしてくれたという事実を知ることになりますね。自分がまた、目覚めた後に何が起こったのか調べようと、自分自身に移入をするが、その瞬間に近くに迫ったヘビを見て、おびえたために自分を生かしてくれた年寄りのカエルを蛇の方に押しやってしまう。自分をオタマジャクシを救った正しい者、ジムグリガエルにぶつかり気絶した被害者だとばかり思っていたけれど、恐怖に怖気づいた瞬間、本人も加害者になった、という事実に衝撃を受けます。主人公は、死を避けて走って行く自分に移入せずに、ヘビの口の中に入った年寄りカエルの運命線に参加して、死の柱に沿って上昇します。その死の柱のカエルの目が主人公の目と重なりながら、一匹一匹の動きが一つのダンスの動きになります。そして死の柱が解体され、絡み合っていたカエルがすべて解放されます。

KIAFA:ある意味、仏教的解脱のようなものですか?

監督:はい、そう解釈することができます。心から自由な状態になろうとする。カエルが井戸のように積まれている長い柱が死の道です。上がりながら分解され解体される場面は、決まっている運命と自由意志がないところから抜け出すことを意味している。その部分を仏教で言う解脱と言えますね。

KIAFA:最後の場面で、特にカエルが垂直に上がって解体され、まるでダンスを踊るようでした。今までのおっしゃられた話と踊りが調和を成して独特の世界を作っています。ここでダンスという素材を借用した理由は何ですか?

監督:大学の時、踊ることが好きでした。クラブも好きだったし、ダンス、瞑想をしたこともあります。踊るとき、私は何かの意識と行動が分離されている感じがしました。ダンスはダンスのまま、意識は意識のまま、分離されたものと同じような経験です。ダンスへの興味が消え、本格的にアニメーション制作をするようになり、動きのタイミングを観察する時間をより多く持つようになりました。そうやって観察をしてみると、人の動作がダンスと同じだと思いました。日常の動作と踊りは、大して変わらないと感じました。だからカエルの動作をダンスのように表現していました。例えば、ヒキガエルの転がり落ちる様子はヒップホップのようなものです。(笑)このような私のダンスについての考えと日常の動作を相互に組み合わせてみたかったのです。

KIAFA:いろいろな色のカエルが皆、木の上に登るシーンを見ると、みんな一緒に登っていると天敵である鳥の目によくとまり、皆つかまってしまうような気がしたりしました。カエルたちがそのような行動を見せるのも、一種の無意識的な行動なのでしょうか?

監督:普通、最も恐ろしく極端な状況で、本能的な行動をするでしょう?無意識のうちに行動が発現されるでしょう。そんな恐ろしい状況で、とりあえず高い所に登ってみようと思ったんだと思います。自分たちが行くところは、高くて死んだ楓の木だけ。派手な死という異質な感じも与えたかったです。鳥に食べられ不幸な結末を迎えるかもしれないけれど、無意識的にそうするしかなくなるのでしょう。

 KIAFA:『Indra’s Net/그 믈』、『所以然/소이연』、『Noodle Fish』など監督の作品には、社会的なメッセージや深い哲学を含んでいると思います。

jinman04_INDRAsNet.jpg
『Indra’s Net/그 믈』 2009 / 11:23 / puppet

jinman05_Soeyoun.jpg
『所以然/소이연』 2007 / 10:18 / clay, puppet


監督:あるメッセージを伝えたり、特別な哲学を盛り込もうとしてはいないです。ただ、『Noodle Fish』の時から話そうとしている「次元」について話したかったです。 『Dancing Frog』は『Indra’s Net/그 믈』と『Noodle Fish』の延長線と言えますね。量子論、脳科学の本が好きなのですが、そういう本を読むとき、あるイメージが思い付くんですよ。そのイメージを表現するために話を作り出そうとすると、シナリオができてきます。意識の空間でつながった線は、ニューロンと同じです。他人と私の区分線や境界をなくしたかった感じも入れました。また、子どもの頃から肉体から抜け出したい気持ちがありました。頭は想像をするから、それは簡単ですが、暑さや寒さ、空のようなもので身体は思ったほど動かないから、そういうものが私を遮る感じでした。そういう様々なものが絡まって、自然に話が作られるのです。

KIAFA:では、観客がこの作品をどのように受け入れてくれればいいと思いますか?

監督:何よりも作品で試みたさまざまな実験や挑戦を楽しく見ていただきたいという願いがあります。特に立体ゾートロープを活用して、他のカエルの意識に移入するシーンに愛情をたくさん注ぎました。率直に言って、このシーンを作るためにこの作品を作ったと言えるほどです。また、実際の植物を活用して、背景を作ったのですが、時間や湿度の変化に応じて少しずつ育ったり動くんですよ。そういう生きている植物の動きも見ていただければ良いし、主人公のダイナミックな動きも楽しく見ていただきたいと思います。



KIAFA:最後に、今後の計画や次回作について伺いたいです。

監督:私の作品を振り返って見たことがあるのですが、意識の流れに沿って制作されたようです。大学での専攻は彫塑でしたが、視覚デザインを副専攻として選択したんです。なので卒業する前に、アニメーションでも一度作ってみようかと思い『デコとボコの話/볼록이 이야기』を作りました。


jinman03_BologeeStory.jpg
『デコとボコの話/볼록이 이야기』 2003 / 11:18 / noodle


それが孤独だった時期なので、その心が作品に反映されたと思います。落ち葉を見ながら、突然思い付いて書いたのが『所以然/소이연』で、その後も、興味に導かれるまま作品を作ったようにと思います。 『Indra’s NET/그 믈』や『Noodle Fish』は、科学、哲学、瞑想書籍に興味があったときに制作した作品なので、そのような内容が自然に作品に溶け込みました。そして『Dancing Frog』を作ったのですが、シナリオを書いていってみると『Indra’s NET/그 믈』や『Noodle Fish』の内容が統合されたものみたいになりました。人々は「私は誰なのか?」についての悩みをたくさんするでしょう。世界と私についての疑問を解いてみようと、物理学的でありながら哲学的なアプローチを試みたんです。今回の作品は、私が今までしてきたもの、考えてきたものを総合的に表現した作品だと思います。短い時間の中で多くの内容を入れたので、少し混乱するかもしれないけれど、瞬間瞬間のシーンを楽しみながら見ていただきたいと思います。制作過程が長く大変でしたが、本当に楽しくて作った作品であり、自ら満足しています。
でもこれからは、解脱や次元などの主題は扱わないつもりです(笑)。もう関心がなくなったと言おうか…。次は、もう少し現実的かつ愉快な話を作ってみたい。今年の秋から作り始めて、来年に撮影を開始する予定です。キャラクターも人間型にしたい気もするし、麺素材もいつかまた使ってみようと思っています。休むとたくさん考えるじゃないですか。いろいろな方向に考えています。

<インタビューを終えて>
私たちを迎えいれようと手作りのスコーンも準備してくださいました。
思いがけないおもてなしを受け、その暖かさと細心さに感動しました。 (♡)
そして話を交わしてみると、考えながら止まっているのではなく、挑戦し続け行動される方、という感じを受けました。
やろうと思う部分があれば集中して着実に進めていき、挑戦されることを躊躇しない方だと感じ、話を聴いている間、監督の話と魅力に夢中になりました。
『Dancing Frog』が、キム・ジンマン監督が生きて来られた生、表現しようとした考え、表現したい方法などが総合的に表れた作品だから、監督の願いのように、見ながら、気になる点を考え、なぞなぞを解くように見ていけば、本当に面白く作品を見ることができると思います。



キム・ジンマン
弘益大学彫塑科卒業。中央大学先端映像大学院アニメーション学科卒業。ストップモーションアニメーション作家。
『デコとボコの話』(2003), 『所以然』(2007), 『網』(2009), 『Noodle Fish/でこぼこ魚』(2012)
監督の公式スタジオサイトHumuhumu



<関連記事>
花コリ2013観客賞授与&花コリ2014トレーラー紹介 
2013年 [東京会場]キム・ジンマン『Noodle Fish』トーク録 
「Noodle Fish」キム・ジンマン監督インタビューbyキム・アヨン 
2011年 キム・ジンマン監督「Noodle Fish」スタジオ訪問記by花コリスタッフ 
キム・ジンマン「Noodle Fish」スタジオ訪問記by KIAFA 
関連記事
スポンサーサイト