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『はちみつ色のユン』ユン監督インタビュー

『はちみつ色のユン』ユン監督インタビュー

2012年12月、アニメーションxドキュメンタリー映画『はちみつ色のユン』が公開された。原作者であり共同監督であるユン氏は、幼いころ韓国からベルギーに国際養子として迎えられ、ベルギー人一家の一員として育てられている。監督の自叙伝ともいえるこの作品は、同年のアヌシー国際アニメーションフェスティバルで長編部門観客賞とユニセフ賞を受賞するなど、ヨーロッパを中心に高く評価されている。
日本の文化に造詣が深く、日本を題材にしたバンデシネ(フランスやベルギーを中心に制作されている、独特のカラーを持ったストーリー漫画)作品を多数発表しているユン監督。本作の原作漫画は、韓国でも出版されている(『피부색깔=꿀색』図書出版)。
今回は特別編として、公開に合わせ来日したユン監督に、作品について、また国際養子としての自らの半生について語っていただいた。



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—この作品は、ユン監督が描かれたバンデシネが原作ですね。ご自身の体験を、漫画で表現してみようと思われたきっかけは何ですか?

ユン監督(以下、ユン):漫画家を始めたころは、フィクションのストーリーを描いていました。ただ、作品の中では、何らかの形で人間のアイデンティティーを取り上げ、表現していたと思います。制作を続けているうちに、自然に「自分の物語を描く」順番がやってきたような気がしています。子どものころからずっと絵を描き続けてきたので、漫画を通じて自分自身のストーリを表現することは、ある意味とても自然な成り行きでした。作品中にも一人で絵を描いている場面が出てきますが、ドローイングという行為そのものが、自分にとってはテラピーであり続けているのだと思います

—では、その原作を、今回のような形で映画化することになったのはなぜですか?

ユン:ご覧になったとおり、この作品は実写のドキュメンタリーとアニメーションで構成されています。実は、最初は実写ドキュメンタリーとして企画が始まったのです。今回の共同監督であるローラン・ボアロー氏は、ドキュメンタリーの制作を長く手がけてこられた方ですが、原作の漫画をとても気に入って、私が韓国に里帰りするというドキュメンタリーを、TV番組として計画していました。ただ、TVの方では企画が実現しなかったので、劇場用作品として制作することになり、その途中で、主人公の子ども時代をアニメーションで表現しようという話が出てきたのです。そこで、実写部分はボアロー氏、アニメーションは私が監督する方法で制作しました。もちろん、この物語を映画に作り上げること自体も、私が自分自身のアイデンティティーを求める作業の、延長線上にあるのだろうと思います。

—作品の中で描かれている体験や想像は、全て、監督ご自身が直接経験されたことなのですか? 他の国際養子たちの体験談をもとに構成したり、あるいはフィクションで描かれた部分などもあるのですか?

ユン:すべて私自身の個人的なストーリーであり、自分のリアルな記憶や経験からできています。ただ、例えば韓国の母親について想像を巡らす場面や、リンゴに自分の心情を重ねる場面などは、シンボリックな描き方で表現しています。また、例えば、映画の中で韓国の母親を想像して描く場面がありますが、実際には、悲しい顔をしている子どもの絵をよく描いていました。

—映画では、主人公が17歳になるころまでを描いていますが、この時点でストーリーを終わらせているのは、何か理由があるのですか? また、原作では何歳くらいまでを描いているのですか?

ユン:自伝的な物語ですから、成人してからのエピソードを描くこともできますが、自分にとっては、この17歳という時点が、とても大事な時期でした。韓国とベルギーという二重のアイデンティティーを受け入れられたのが、ちょうど17歳のころ、物語で描いたとおり、母親との葛藤と和解を経験したのです。ひとつの作品として、アイデンティティーというテーマを描くにあたっては、この時点までを描けば十分かなと思いました。漫画の原作でも、5歳から17歳のストーリーを中心に、最後に成人してからのエピソードを付け加えています。

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—ユンさんがこれまで歩んで来られた道を踏まえて、いま、韓国の社会や文化を、どのように捉えていらっしゃいますか?

ユン:私は5歳のときに韓国を離れ、ヨーロッパの社会で育てられています。物心がついた時期に、私は自分の中の韓国を、全部捨ててしまおうと思ったことがありました。ベルギーの生活に適応していたこともありますが、「韓国が自分を捨てた」という思いに、とても強く怒りや恥の感情を抱いたのです。作品の中に、日本のアニメや空手などに夢中になる場面がでてきますが、自分が韓国人であることを否定しようとする代わりに、自分の中にあるアジア的な部分を、日本に憧れることによって補完していたのでしょう。しかし、韓国がなぜ自分を捨てたのか、またなぜ養子となったのかの原因を知るにつれて、怒りの感情は、徐々に消えていきました。

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—では、ユン監督は現在、ご自分のアイデンティティーをどのように捉えていらっしゃいますか? また、ご自身の「居場所」とは何かとお考えですか?

ユン:私はいま、フランスのボルドーで暮らしていますが、一時期タイに移住していましたし、日本や韓国なども旅行で訪れて、いろいろな地域の文化を経験しました。ヨーロッパにいると、外見だけで異質な存在に見られがちですが、こうして日本にいるときは、外見上目立つことはないので、神経を使わなくてすみます。ただ、私自身は、どこにいてもそこが自分の居場所だと感じることができるんですね。例えば、日本では部屋の中では靴を脱いで過ごしますが、ヨーロッパではそういう習慣はないのに、私はそれを自然に受け入れているんです。そう考えると、私にとってのアイデンティティーとは、ひとつに定まっているものではなく、流動的で柔軟なものなのだと思います。だから、どこへ行っても、自分の居場所を柔軟に見いだせているのでしょう。

—現在、ヨーロッパでも「韓流」が人気ですよね。韓流などをきっかけにして、ヨーロッパの人たちが韓国を見る視線は、変わってきているのでしょうか?

ユン:私は、K-POPも特に聞かないし、ドラマはよく分かりません(笑)。でも、韓国映画は好きでよく見ていますよ。ボン・ジュノや、ホン・サンス、パク・チャヌク監督らの作品は、とても面白いですね。確かに、韓国のポップカルチャーが、日本人やヨーロッパ人に受け入れられているというのは、興味深いことです。ヨーロッパの人たちが、より広く文化の多様性を認めるようになってきたと思うからです。ヨーロッパの人が、アジアの文化に尊敬や憧れを持つという現象は、とても面白いです。アジア系の人たちが街の中で差別的なことを言われたりすることは、依然としてあります。ただ、文化への理解を通じて、人々が多様性に対して寛容になってきたことは、とても良い傾向だと思います。

—また、フランスでは、昨年の大統領選挙をきっかけに、韓国からの養子であるフルール・ペルラン氏が、閣僚になりましたね。こうした出来事を、どう捉えていますか?

ユン:よい変化だとは思いますが、多分、私と彼女は、考え方も生き方も違います。別の道を歩んでいるのだと思います。彼女は政治家ですから、その言動も、政治家としての立場から出ているものです。彼女は公的な場では、自分は100%フランス人である、と発言している。アジアに出自があるけれども、フランスの社会に統合される道を、自ら選択しているのでしょう。でも、私はアーティスト、表現者です。表現者である以上、自分が思うそのままを表現することが義務だと思いますし、そう生きているつもりです。

2012年12月22日 下北沢にて



『はちみつ色のユン』は、2月現在、東京・ポレポレ東中野、下北沢トリウッドにてロングラン公開中。3月より大阪・第七藝術劇場、神戸・元町映画館、京都・京都シネマなど、日本各地で公開予定で、さらに自主上映の受付も開始されている。

「多文化メディア研究会」主催による上映+討論 開催

日時:2月23日(土)16:30~上映、18:00~トーク+議論
会場:東京芸術大学 北千住キャンパス 第一講義室

   〒120-0034 東京都足立区千住1-25-1

   JR常磐線・千代田線・日比谷線北千住駅 下車徒歩約5分
トークゲスト:伊藤裕美氏(オフィスH)、土居伸彰氏(日本学術振興会特別研究員、東京造形大学非常勤講師)
コメンテーター:平田由紀江氏(獨協大学)


●ユン プロフィール
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1965年12月2日、韓国・ソウルで生まれ、1971年にベルギーの一家の養子となり、ユング・エナン(Jung Henin)に改名する。
1987年より、バンデシネ作家として活動を開始、『Yasuda』シリーズ、『Kwaidan』シリーズなど、日本を舞台とした幻想的な作品群で人気を確立する。
2007年、自伝的作品『Couleur de peau : Miel(肌の色:はちみつ色)』第1巻、2008年に第2巻を発刊。
2012年、ローラン・ボアローとの共同監督により、『Couleur de peau : Miel(邦題:はちみつ色のユン)』を映画化。

(協力:ポレポレ東中野下北沢トリウッド、オフィスH)
(文責:田中 恵美)
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