名古屋ゲスト、カン・ミンジ『Natural Urban Nature』インタビューbyチャン・ヒョンユン

カン・ミンジ監督インタビューbyチャン・ヒョンユン監督
KIAFA CAFE(2010年9月27日)「監督語る」より

プロローグ
インタビューをする前にDVDをもらいカン・ミンジ監督の新作『猫我(ミョア)/묘아』を観た。『紙一枚/종이 한장』以後の作品がとても気になっていたし、新作を見ずにインタビューをするなんて難しいと思ったからだ。でも…こんなに美しい画面だったなんて! 黒い猫が、まだらで華麗な点を煌めかせながら歩いて行くシーンは、深い音色のピアノの音に出会い、僕の心を振わせた。ドローイングアニメーション特有の労働の集約でもある、一つ一つ手作業の感じがとても良かった。羨ましかった。僕も作りたかった、こういう作品。一方で、大きい画面で作品を観られなかったのが惜しかった。
そしてアポを取り、カン・ミンジ監督に出会った。

チャン:僕、『猫我(ミョア)/묘아』けっこう好きかも。
カン:でしょ?私もそう思った。はは。
でもなんで、映画祭のたびに落ちちゃうんだろう?メッセージがないからかな?
チャン:『猫我(ミョア)/묘아』のような作品はメッセージを見つけ出すより、ただ見たままでいいのに。画面を楽しめばいいのに…。どこら辺に出したの?
カン:数え切れないほど出しました。でも上映が確定したところはインディ・アニフェスト以外ではフランスのRythmetic実験アニメーションフェスティバルだっけ、そこ1か所だけ。
チャン:『猫我(ミョア)/묘아』そんなに実験アニメーションっぽくないけど…。とにかく、『猫我(ミョア)/묘아』は今年出たドローイングアニメーションの中で一番最高だと思う。でもなんで、映画祭に通らないんだろう?不思議だなぁ。
カン:そう?とにかく、それで、けっこう憂鬱で。だからもう、出品したこと忘れようと思って。
チャン:カン・ミンジ監督はキム・ジュン監督と二人でドローイングアニメーションのタイガー&ドラゴンというか…。
カン:私、これからはドローイングじゃなくて、他の面白いことやろうかと思って。
チャン:面白かったのに。
カン:実は私もやってて面白かったけど。
チャン:それに音楽もけっこううまくできてた。
カン:音楽いいでしょ?音楽をやってくれた方に、私が一年制作したものより、かなりいいって言ったわ。

■『猫我(ミョア)/묘아』*花コリ2011で上映
2010 / 0:08:04 / Drawing
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チャン:『紙一枚/종이 한장』では音楽がちょっと前面に出すぎてる部分があったでしょ。悪いっていうんじゃなくて、その作品にはその音楽が合うんだけど、でも今回のは本当に自然っていうか。フェスティバルの審査ではそういう面を見ないのかな?
カン:ある人は心血を注いで作品をつくったのに、どの映画祭でも上映されなくて。そしたら、それ、どうしたらいいの?作品を映画祭の審査委員の審査の目に合わせて作らないとだめなのかなぁって、そういう風にも思ったの。そんな風に考えてたら、憂鬱になってたんだけど、今は大丈夫になった。
チャン:短編制作すると、虚無感にとらわれるのが、映画祭でだけ上映するじゃない?それって、音楽をやる人は、アルバム出したら、誰か買いたい人がいたら買えるじゃない?最近は音源として売ることはできるけど。どっちにしろ、僕らがアニメーションを作る時間は、そういうアルバムを制作するみたいに長くかかるのに、それをネットで買えるわけでもなく。だからマンガよりある面で憂鬱なのは、欲しい観客が購入できるわけじゃないから。映画祭の時に、僕の作品だけ観に来るってわけでもないから。
カン:だから私が思ったのは、短編アニメーションを本当に趣味でって考えなければいけないのかなぁって思うの。
チャン:短編アニメーションは制作をするというのがかなり大変だと思う。例えば、童話の本なら、欲しい人が本屋さんで買うけど、短編アニメーションは流通が活性化してないから、僕の作品をみんなに露出させるという面で狭い媒体だと思う。ところで、前の卒制の『吹き出物/뾰루지/A pimple』とは最近の作品とはスタイルがかなり違うみたいだけど、今、何歳?

■『吹き出物/뾰루지/A pimple』*花コリの第一回目にあたるLink into Animated Korea2008で上映
2006 / 4'55" / drawing, 2D, Rotoscope
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カン:28歳(2010年インタビュー当時:韓国の年で)。
チャン:合ってるね。24歳のとき、卒業して、『紙一枚』つくって、『猫我』つくったから。
カン:何が?
チャン:卒制のあと、『紙一枚』の間に何したんだろって思って。
カン:たくさんつくったんだけど、『Hello』や砂アニメーションもやって。
チャン:ちょっと卒制と『紙一枚』を作るまでの間が長いって錯覚してて。僕は1年に1作ずつは作れないんだ。実際のところ、それ位のテンポが一番あってると思う。なぜかっていうと配給もして、新しい企画もしなきゃいけないから。制作が6ヶ月かかるなら、なんて言うか、大部分、制作だけで1年越えちゃう。
カン:『ボクの友達子ジカくん/내 친구 고라니 / My Friend Go-ra-ni』も?
チャン:『子ジカくん』は、14日…。
カン:でしょ?私、『子ジカくん』が1年?って思っちゃった。

■『ボクの友達子ジカくん/내 친구 고라니 / My Friend Go-ra-ni』
チャン・ヒョンユン / 2009 / 4'11" / 2D Computer *花コリ2010で上映
ソウル環境映画祭から要請を受けて制作した作品
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チャン:学校卒業して就職することもできたじゃない。でもなんで短編制作を始めたの?
カン:私は元々、アニメーションを知らなかったんだけど。あまり好きじゃなかったし。でもアニメーション好きな友達がいたんだけど、韓端大に2人とも合格しちゃったの。それで映像美術だから、映像の方だと思って入ってみたら、アニメーションだったんです。それで学校を辞めようと思ったんだけど、なぜかってイラストみたいなのやらなきゃいけないかなって思って。でもやってみたら、面白くて。 就職は最初から考えてもみなくて…。私は卒業したら留学したかったの。カナダに行ってアニメーションの勉強をしたかったんだけど、カナダは落ちて、アメリカは受かった。でも『紙一枚』が制作支援に通って、留学を1年延ばして、『紙一枚』を作り終えてからは、絶対行かなきゃいけないのかなって思いはじめた。
チャン:なんで?
カン:う~ん。わかんない。その時は家族の問題もあって…。何か怖気づいていかなかった?航空券も買って、家も決めておいたのに…。
チャン:僕が行きたい、CalArts
カン:あ、こんなことがあった。何か、自分の国で自分が成し遂げたものがあまりないって思った。ただ逃避として行くのではないかって思って…。また行って戻ってくれば、1億ウォン(約800万円)近くかかるじゃない。戻ってきて、私が教授になれるわけでもなく、ずっと制作するのに、そんなに大きなお金をかける必要があるのかって思って。でも今は4年間ずっと制作をしてきたから、また行きたいって思う。留学じゃなくても、ただちょっとここを離れていたいって思う。
チャン:完全に理解できます。いいと思う。制作をずっとしてると、くたびれて充電しなきゃって思うから。
カン:私はスタジオに所属してるわけでもなく、完全に1人で制作してるじゃない。だから気持ちが焦る。だからだんだん仕事中毒みたいになって。旅行に行っても作品のことを考えるばかりで、ちょっと自然とおかしくなる。
チャン:会社に通うわけじゃないから、他の人たちは「みんなはいつも時間がたくさんあるだろう?」って思ってたんだけど、むしろ、いつも仕事してる状態になっちゃう。
カン:私の友達も。仕事場もないのに、なんでそんなに忙しいんだって聞かれる。
チャン:会社通いの友達は、普通僕を見て、すべての時間を自由に使えると思ってる。でも思ったより、そうじゃない。会社は土日休むのに、僕らはちょっと休めば不安になるでしょ。だからよりストレスが多いみたい。

チャン:『紙一枚』の話だけど、いつも気がかりだったのが、後半部分で紙が折られながら画面が分割されるの、どうやってやったの?
カン:折って開くっていう絵をたくさん描いてました。これをアニメーションでやれば面白いんじゃないかと思ってやったんだけど、ホントに大変でした。
チャン:画面も分割するじゃない?

■『紙一枚/종이 한장』*花コリ第2回目にあたるLink into Animated Korea2009で上映
2008/11'08"/paper, drawing
★インディ・アニフェスト一般部門優秀賞受賞★
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カン:分割した状態で動画をつくって、それを折った状態でトレーシングしたんです。その後、撮影する時は意外と簡単で。女の子のシーンで男の子になる時は、最後の場面で針金を細くくっつけました。最後のシーンをオブジェアニメーションにしたんです。
チャン:じゃあそれを直接撮影したの?
カン:カメラで撮影しました。
チャン:『紙一枚』の他のシーンは?スキャンしたの?それとも直接撮影したの?
カン:カメラで撮影しました。
チャン:ああ、それできれいな黄色が出るんだね。
カン:いいえ、きれいな黄色いは、実際は出てません。なので、ソースを合成したんです。全体を。
チャン:-_-;
    ところで、今回の作品の題名は何で『猫我(ミョア)』なの?
カン:私が大好きだった猫がミョアなんだけど、その猫が突然死んじゃって。企画をしている途中で死んだんです。それで、ただその子のためのアニメーションをつくろうと思って。

チャン:砂アニメーションは何でつくるようになったの?
カン:卒業してから、私これからどうしよう、と思っていた時に、卒業した先輩がストーリーボードアーティストをやっていたんだけど、「映画に砂アニメーションが入ってたんだけど、やり方わかる?」って聞いてきて、「私、うまくできるよ」って言っちゃった。
チャン:それで、それから研究したのか。
カン:面白かったです。
 次回の作品からは、ただ机に向かって制作するんじゃなくて、体も自由な制作をしたいです。
チャン:そうだね。日本のトーチカ(*1)の作品を見るととってもいい感じ。
(*1)トーチカ:主にペンライトで光のアニメーションPIKAPIKAを各国各地で撮影、活動中。インディ・アニフェスト2009海外ゲストとして、映画祭で作品を上映、映画祭開幕式でPIKAPIKAをやったり、期間中ワークショップをした。
カン:ええ、シュテファン(*2)も、とっても良かった、でしょ?
(*2)stephan Muller:トーチカと同じくインディ・アニフェスト2009海外ゲストとしてドイツから招待されたアニメーション作家
チャン:うん、楽しそうだった。
カン:シュテファンは、顔は憂鬱そうだったけど。
チャン:そうかい?どっちにしろ僕がやらない制作をしているから、とっても良くみえて、早くつくるから、良さそうだった。アニメーションは必ずしも時間をかけて制作しなければならないのか、とも思った。スピーディにパフォーマンスみたくつくって、いろんな人に会うっていうのが良さげだった。それなりに大変なことは多いだろうけど。
カン:チャン監督は制作そろそろしないといけないのでは?
チャン:今? やんなきゃいけないけど、一旦、ご飯食べに行こう。

カン・ミンジ blog
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2005年『キム・チュ・カン・チョ/김.주.강.조』
2006年『吹き出物/뾰루지/A pimple』 ※Link into Animated Korea 2008 上映作
2006年『Hello!/안녕!』
2008年『紙一枚/종이 한장/A piece of paper』 ※Link into Animated Korea 2009 上映作
2008年『Documentary about my One day』
2010年『猫我(ミョア)/묘아/Myo-A』 ※花開くコリア・アニメーション2011上映作
2011年『Natural Urban Nature』 ※インディ・アニフェスト2011オープニングフィルム、花コリ2012上映作
2011年『Untitled』※ Ani2011 Project
*その他に本のイラストや砂アニメーション、サンドパフォーマンス、CFアニメーション制作をしている。

★名古屋会場ではカン・ミンジ監督をゲストにお迎えしてトークイベントを催します。
監督の詳しいフィルモグラフィーやイベント情報は→花コリ2011名古屋会場ゲスト・イベント情報
また、カン・ミンジ監督の作品集DVD、名古屋会場で販売いたします。

チャン・ヒョンユン
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2002年『ティータイム/티타임/Tea Time』
2003年『レター/편지/The letter』
2005年『ウルフ・ダディ/아빠가 필요해/Wolf daddy』
2007年『わたしのコーヒー・サムライ~自販機的な彼氏/무림일검의 사생활/A coffee vending machine and its sword』
※インディ・アニフェスト2007オープニングフィルム、Link into Animated Korea 2008 上映作
2009年『ボクの友達子ジカくん/내 친구 고라니 / My Friend Go-ra-ni』 *花コリ2012上映作
*ただいま(2012年現在)長編『The Satellite Girl and Milk Cow』制作中

★チャン・ヒョンユン監督の新作↑の絵コンテやイメージ図を4月に名古屋の大須にオープンしたTheater Cafeにて韓国アニメーション原画展開催中!(4月28日~5月11日)
詳しくは4/29のレポートを→[名古屋会場]韓国アニメーション原画展 開催中!

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