パク・ジヨン「都市で彼女が避けられないモノたち」

花コリ2012 Bプロで上映「ラクダたち」のパク・ジヨン監督の前作「都市で彼女が避けられないモノたち」(Link into Animated Korea2009で上映)について、「The Bird」のキム・ソンギル監督がインタビューしています。パク・ジヨン監督の前作は今回の「ラクダたち」に通じるモノがあるので、記事を紹介したいと思います。
「ラクダたち」については、また次の機会に…。

TheBird

 *「The Bird」キム・ソンギル
 2007, HD, Color, 0:18:50, 3D
 インディ・アニフェスト2007 スペシャルメンション

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最近国内外の短編映画祭やアニメーションフェスティバルでいつも見られるアニメーションがあります。「都市で彼女が避けられないモノたち」という短編アニメーションです。その作品を制作・演出したパク・ジヨン監督に会いしました。


<ウォーミングアップ>

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「ウルフ・ダディ」のチャン・ヒョンユン監督率いるスタジオ[今じゃなきゃダメ]にて。

キム:珍しい質問からしますよ。アニメーションをするようになったきっかけは何ですか?(笑)
パク:ただ初めは、絵描くのが好きだったんです。単純に話を作って私の内面の何かを引っ張り出したい、ということではなく、ただ絵が描きたかったみたい。それで美大に行きたかったけど、いろんな理由でうまくいかなくて他の方面を考えている途中でマンガ方面を少し考えてました。それでしばらくはマンガを描いてました。あの時も演出とかを考えてたのではなく、一枚の絵を本当に熱心に売って描くくらい? 描いてはその絵を見て自ら満足してました。そうするうちに偶然にアニメーション学院、兼会社に入ったことがあり、ただでアニメーションを教えてくれて、研修期間が終わると仕事ができる所でした。 そこからアニメーションを始めたが、あの時もただ、絵描いてお金を儲けることができるのが不思議で、良かったし、これが私の求めていたものだったんだと思いました。
キム:郵便局に勤めてたことがあるとか?退社をなさった後にアニメーション関連会社にいらっしゃったのですか?
パク:あ…、はい…。本当は、郵便局の話はしたくなかったんだけど…。ハハ。とにかく郵便局に勤めながらマンガをずっと描いたんですよ。アニメーション会社に行ったことはその前だったような。公務員試験準備みたいなことしている途中、しばらくよそ見してたことがあったんですよ。
キム:そうなんですか。何年くらい勤めたんですか?
パク:2年くらい。
キム:後悔してないですか?
パク:あまり後悔しないです…。その時代が、私にこれといって良かったと思えないし、そこの生活は安定してたけど、ずっと他のこと考えていたんです。

キム:私も郵便局が好きです。「The Bird」の制作をした後、外国の映画祭に送るので、よく郵便局へ行きました。EMS担当の職員が映画祭に出品することを調べてくれて、本当によくしてくださったんですよ。几帳面にチェックしてくれて、安く送る方法も教えてくれて。何ヶ月もそう接してくれたので、とてもありがたくてDVDをプレゼントしました。下心なかったんですよ。これは本当です。でもその後からとてもぎこちなくなって。少し冷ややかになって。
パク: ハハハ。
キム: そういうもんですかね?何か悪いことしたかな?結局、郵便局変えました。そばの町内で。
パク: そうですね…。窓口にいるとそういう人がたまにいます。
キム: これは本当に重要な質問ですよ。郵便局の職員たちからみて、旦那としてインディーズ・アニメーション監督はどうですか? 真摯な返事をお願い致します。
パク: ハハ。あの時、インディーズ・アニメーション監督に会うことがなくてよく分からないけど…。そうですね…。
キム: 関心ないでしょう。それでは、まぁ、寂しく次の質問へ。

<都市で彼女が避けられないインタビュー>

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★インディ・アニフェスト大賞受賞★
「都市で彼女が避けられないモノたち / The Things She Can't Avoid in the City」
도시에서 그녀가 피할 수 없는 것
パク・ジヨン(박지연)/2008/12'45"/2D, 3D
都市に住む彼女の家は、彼女が都市から感じる距離感と同じくらい、クレーンによって持ち上げられている。そこで彼女の存在感は彼女の恋人とも、そして小さな鳥とも均衡を合わせにくいくらい軽くなった。より一層暴力的に変わって行くボーイフレンドの欲望は、彼女をより一層圧迫し、結局彼女はシーソーの上で消滅する。そして都市の中の欲望は均衡を取るようになる。


キム:「都市で彼女が避けられないモノたち」を制作するきっかけは?
パク:「都市で彼女が避けられないモノたち」は私が2005年に書いた長編映画のシナリオから出発します。どうせ映画を作るつもりはなかったけど、長編シナリオを書きたいと思って、シナリオ講座を履修しながら書いたシナリオです。題目は「猫と男、冷蔵庫と女」だったんです。このシナリオの内容は短編で作られた今の物とは、かなり変わったが、とにかく手始めという点で、2つは繋がっていると思います。内容は、ある日事故で記憶を失って顔だけ赤い顔の猫に変わって行く男についての話です。今の「都市で~」に出てくる猫に似てます。このシナリオを脚色して短編で作ったものの、失敗して新しいシナリオを書きました。そうして出てきたものです。

キム:使われたメタファーがとても奇抜で、説得力があります。
パク:うーん…。最初は都市で独身生活を送る女の感じや、感情の流れを追っていきたかったんです。「Nobody Loves Me(1994/独)」みたいなのを作りたかったんですよ。でもこれは短編で、短い時間で一気にすべてのことを処理しなければならなくて、女の感情を代弁してくれる何かが必要だと思いました。家は今の私にも重要な問題で、完全な私だけの家がないというのが、生活の不安をあおる時があります。それで女と家をつけて話を作りたかったんです。初めに高層ビルのてっぺんに、小さく、心細く新居のようにくっついている家を考えたけど、今考えて見ればそれも良かったなという気がしますね。

キム:作品全般で不均衡は重要なキーワードとして使われていますが、その不均衡が彼女に意味するものと、実際に監督が感じた不均衡と不均衡を作る要因を教えてください。
パク:この作品で不均衡を話すのは、男との関係が多い部分を占めますが、実際は彼女の生活全般にわたった不均衡です。実は不均衡の原因を話そうとすると、とても私的な話になるので、簡単に話しますね。ソウルに初めて上京した時の感じを、作品中のナレーションで入れました。あの時の心細いソウル生活、両親との葛藤、安定できなかった職業などが一団となってこの作品の中で不均衡として表現されたようです。
キム:作品から見える監督の視線では、感情が見えません。無茶な質問ですが、恋愛に対する個人的な話を少し聞きたいです。
パク:実際、作品を見れば、恋愛の経験がなければ出にくい内容だと思います。私も何度かの恋愛経験があり、その出会いと別れの過程がいつもまったく同じではなかったし。私が先に感情が冷えた時と、相手が先に感情が冷えた時の感じは千差万別で、それらが本当に自らに深い傷になれば、またそんな感情に出くわされることが恐ろしくなる時があります。それでそういった全ての感情から、動じずクールになりたいという希望が、作品中の彼女ではないかと思います。男でも女でも、お互いにとてもエゴイスチックなので自分が求めるものだけ考えているのです。

キム:私がちょっと物分かりが悪くて、もう少し説明をお願いします。存在感がだんだん消える女の消滅と男の口の中に消える消滅をもう少し…。
パク:男の口の中に入っていくのは少し他の意味です。消滅と言うよりは、その後の状況を見ればその男の、過去の他の女達とコーヒーを飲むシーンがあるでしょ? 男の口の中に入って行くのは、性の関係を(韓国では)男たちがたまに「食べる」と表現します。実は大人用のアニメーションを性のシーンを入れないで表現して見ようとしたのです。ある人々は「都市~」を見て、どうして直接的に表現をしないのか?と…いろいろ言うんですよ。
キム:それなら「都市で~」の女は今、何をしているんでしょうか?
パク:ハハ。消えなかったら現実に適応しながら暮しているんじゃないでしょうか?同じことを繰り返しながら。
キム:フムフム。アニメーションを作っているかも知れないですね。
パク:(にらんで)叩くよ!

<彼女のインスタントなメモリー>

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「インスタントメモリー/ Instant Memory(2005)」20 mins

キム:「都市で~」の前作の話「インスタントメモリー」「都市で~」を作った監督の作品だとは全く思いませんでした。TV シリーズのような形態のアニメーションでした。ストーリーを見ても、長く、続くような内容でした。商業的な作業を念頭に置いて作ったんですか?
パク:はい。その作品は元々TVシリーズとして企画された作品です。ソウルアニメーションセンターで制作支援をもらった作品なんですが、元々は今の短編作家を支援する制度でした。ところが2005年の一年間、商業的な短編作品を支援する、と、少し政体制が変わった時がありました。支援金も作家支援よりもっと多かったんです。あの時、その制作支援をもらうために企画したんです。どうせ私は商業の方でアニメーションを始めたし、私とよく合うと思ったんです。シリーズが1編ほどだと思ってください。
キム:村上春樹、好きでしょう?
パク:はい。
キム:「都市で~」と「インスタントメモリー」のナレーションで私が感じたんですよ。春樹作品の中でオススメの本ありますか?
パク:私はすべて好きですよ。彼の作品の中で『夜のくもざる』が好きで、その外には長編よりは随筆が好きな方です。
キム:前作もそうで、最近のもそうなので、元はと言えば消滅と喪失の話だと言えますね。前作は記憶で最近のは、存在の喪失を意味すると私なりに思ったんですが、そういうことに関心を持つようになったきっかけは?
パク:二つの作品は私が捨てられない、どこからか出た、自分の子どもたちみたいなのではないか思っています。二つの作品は似ている話を他の方式で解いているのかも知れません。だから…うーん…話すのがちょっと難しいけど、個人的な話が…。前に辛い記憶みたいなものがありました。ちょっとひどくて…そういう記憶や、あの時感じた感情が少し深くめりこんでいたのか、話を書く度にそっちの方へ流れるんですよ…。実際に、避けなかったんです。そのままそういう個人的な感情を入れて作品にしてみたいという考えはあったんですよ…。「インスタントメモリー」の時は、そんな記憶がまだ頭の中で重い状態だったし、記憶が消えたら良いと思い、主題が記憶で流れたようで。「都市で~」みたいな場合はちょっと何気ない状態になって、作品の中の女のようにちょっとシニカルに話を噛み砕けなかっただろうかと思いました。たまに、個人的な話が入っていたと言うと、それを暴こうとする人がいるので、そういう話はちょっと控え目にしようと努力しています。
キム:そうなんですか。気を付けなきゃ。ソウルにはストーカー多いんですって。

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「インスタントメモリー/ Instant Memory(2005)」

パク:そうね…。
キム:監督本人の問題と感じを二つの作品で追い求めたり、噛み砕いたりして辛かったりもしたと言いますが、私は、監督がある日ふと消えてしまうのではないかと、特に「都市で~」を見ながら思ったんです。もしそうなら麗しいパク監督を忘れないために、多くの男性たちがすべきことは何でしょうか?
パク:そうですね…。多くの男性たちが何をしなければならないのでしょうか…。私の作品は、世の中の男性を責めるために作ったものではないけれど。「都市で~」のような場合は、悪い男に見えたりするものの、その場合は経験と言うよりは、男たちが自ら本能だ、と言うものなどに対して話を入れてみたかったんです。誰がダメだった、というよりは、誰かが好きで、またその感情が変わって、そういうものなどが私の力ではダメな時の問題なので、あまり男たちがやるべきことというのはないようですが。
キム:そうでしょうか? それでも何かありそうだけど…。まさかお金をたくさん儲ける事ではないでしょう?

<ありふれた質問>

キム:パク監督が好きなアニメーションを1つおススメしてください。
パク:押井守は、作品ごとにずっと同じ話を長々とするのが、私を見ているようで好きで、『機動警察パトレイバー』は冬の雪降る電柱の下の戦車場面がとても印象的なのでずっと思い出します。
キム:これからの作品について教えてください。
パク:うーん…。次の作品はゆっくり考えています。私は、話が前もって出てこないんです。もう作品つくらないと!と思うと浮かぶんです。ずっと短編を制作していきたいです。時間かかっても、私がいる時間の話をしたいです。私が50歳なら50代の話を…。そういうことありませんか?
キム:ただ気楽に書くエッセイのように?
パク:はい。
キム:今後とも、ずっと良い作品期待します。インタビュー終わり!! ビールでも一杯飲みに行きましょう。
パク:私、お酒飲めないわよ。

KIAFA CAFE「監督語る」より(2008年9月12日)
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