『空き部屋』チョン・ダヒ監督スタジオ訪問記by KIAFA

『空き部屋』チョン・ダヒ監督スタジオ訪問記by KIAFA
(KIAFA CAFE2016.4.19の記事より)


今回のスタジオ訪問記は『椅子の上の男』をはじめ、たった2年の間に、できたてホヤホヤの新作『空き部屋』を伴い戻ってきたチョン・ダヒ監督に会いに行ってきました。

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感傷的で感覚的なスタイルで一貫した彼女だけの作品世界を構築しているチョン・ダヒ監督の話。さあ、始まります!

 スタジオについて

Q.現在、何人の方とスタジオをシェアしているのか?個人的な空間ではない共同制作室で制作をする理由は?
現在6人と一緒にスタジオを使っている。分離された空間に通っており、決まった時間に仕事をしようと共同制作室で制作している。仕事をする時間はその時々によって違いはするが、普通午前10時頃から午後8時まで制作している。

Q.レジデンスで制作した経験が多かったとのことだが、さまざまなアーティストと一緒に生活する中で一番記憶に残っているエピソードは?
フランスにあるレジデンスを2回使った。フォントヴロー修道院(Abbaye de Fontevraud)のレジデンスとストラスブール(Strasbourg)という地方のレジデンスを。ストラスブールではアニメータをしている人が1人と、サウンドをやっている人たちと制作したけれど特に記憶に残っている作家はいない。フォントヴロー修道院では全世界から招待された10名の監督たちが、1ヵ月一か所に集まって、どうやって制作するのかを話し合いながらお互いに文化を共有した。そこにいた作家達全員記憶に残っている。またこのレジデンスに招待されると飛行機代、宿代、奨学金等、全て支援される。あの時、一緒に制作していた監督たちの完成作品を映画祭で観たりすると嬉しい。
この修道院は、周りにヒマワリ畑と森しかなくて、完全に孤立していた。市内に出ようとすると車で30分ぐらいかかった。それで夕飯を食べて、夜8時から12時まで卓球をしていた。そしたら修道院を出る頃には皆、卓球選手になっていた(笑)。

大学生活

Q.美術はいつから始めて、専攻で視覚デザイン学科を選択した理由は?
幼稚園の頃から画家になりたいと思っていた。ずっと画塾に通っていて、芸術高校に入学した。高校では絵画をやり、大学でも絵画で進学したかったのだけれど、当時、競争率が高くて。先生と両親の助言に従い、視覚デザイン科に行くことになり、大学に入って、副専攻で絵画をやった。
 
Q.大学在学中にアニメーションを始めた。アニメーションに興味を持ったきっかけは?
前はアニメーションをやりたいと思ったことはなかった。大学2年の時、視覚デザイン科にあるアニメーションの授業を聴き、アニメーションをやりたいと思うようになった。アニメーションは私にとって「時間」を操ることだったのだけれど、「時間」を媒体であると同時に主題として使えることが魅力的だと思った。もちろん他の媒体にも時間性が含まれているけれど、絵を描いてイメージを作り出すことに興味があった。
 
Q.卒業後に広告会社に勤めた経歴がある。
アニメーションを学科で学んだけれど、具体的な技術や方法を教えてはくれなかった。それでアニメーション広告会社に入った。その会社でアフターエフェクトや作画等のアニメーションテクニックを学ぶことができた。もちろん学校に通いながら先輩たちから少しずつ学んではいたが、現場で使う専門的な方法は会社で学んだ。その会社に1年くらい勤めていたら、自分の話をしたいという別れ目に立った。

 フランスとの縁

Q.フランス留学への決心は簡単なことではないと思う。パリ国立装飾美術学校を選んだ理由は他にあるか?
大学生の時、ヨーロッパ旅行に行ったのだけれど、フランスがとても良くて住んでみたいと思った。それで衝動的に行って住むようになった(笑)。フランスでアニメーションを勉強したくなり、フランス語を1年くらい学びながら学校に入学する準備をした。
パリ国立装飾美術学校ではイラストレーション、アニメーション、ビデオ、写真等、さまざまな科があった。いろんなものを全部やってみられると思って、行ってみたいと思った。アトリエ形式で他の科の授業に参加することができる。そしてその学校のアニメーションと学生たちの作品が実験的であったことも、その学校を選択した理由の一つだった。

Q.制作社SacrebleuProductionsとずっと一緒に制作している。どんな縁があったのか、引き続き一緒に制作している理由は?
フランスは卒業制作審査を外部審査委員達がやる。学科の先生は1人が参観するくらい。外部から来た審査委員の中の一人にSacrebleuProductionsのプロデューサーがいた。卒業制作『木の時間』の審査後、一緒に制作をやってみようという提案を受け、一緒にやることになった。初めて一緒にやった作品『椅子の上の男』が良い成果を収めたので、今回も一緒にやることになった。
 
Q.制作者がやる仕事は?
制作費を工面し、制作するのに必要な全てのことを助けてくれる。『椅子の上の男』は卒業してすぐに制作した作品だったので、制作費をたくさん工面する条件がなかった。プロダクションから直接所定の制作費を支援してくれ、フォントヴローのレジデンスに行く時も手伝ってくれた。今回の『空き部屋』を制作する時、プロダクションでフランス国立映画センター、TVチャンネルCanal+、ストラスブール地域のレジデンスの制作支援を受けてくれた。また、フランスで制作する期間の間アニメーターとサウンド作業のスタッフ、そして滞在に必要なすべてのものなどを準備してくれた。

『Reflection Typo.(2010)』
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出処 http://jeongdahee.com/ 


Q.作品に登場する人物は本人?
いいえ。友達。みんな私だと思ってる(笑)。
 
Q.どうして友達に頼んだのか?
私が撮影しなければいけないので。それにその友達が、背が高く細く柔軟な子だったから。

Q.作品について
パリ国立装飾美術学校に通う前にポワチエにレコール・ド・リマージュ(Ecolede l’image)という学校に1年通った。その時、タイポグラフィーアニメーションを作る授業があった。冬だったが、家に遊びに来た友達を外に連れ出し撮影した。反射した身体の形態を利用してアルファベットを作ったもので。全部のアルファベットをすべて作れるとは思えなくて、一旦いくつか試してみるつもりで動きを撮影した。でも編集してみたら全部できていた。あまり悩まなかったが、結果、面白くできた。

『木の時間(2012)』
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Q.作品に登場する老人の手は誰の手?なぜ老人の手から話が始まるのか?
友達のおじいさんの手。私が自分でやるよりは長い時を生きてきたおじいさんが紙を折って広げることで話を始めることが、より良いと思って、それで。それにおじいさんの皮膚が木の皮に似ていると思った。

Q.木が作品によく出てくる。たくさんの素材の中で特に木に関心を持った理由は?
前から木をたくさん描いていたが、制作をするうちに木に関心を持つ理由が分かるようになった。 さまざまな理由があるけれど、最大の理由は木の浮動性のため。木は、その場所がどんな場所でも初めて与えられた環境に固定されて生きなければならない。木の高さがどんどん大きくなって高くなればなるほど、ますますもっと深く根付くのだけれど、そういう姿がとても強靭に見えた。 そうやって木と自分を比べて比喩しながら考えるようになったし、木という素材自体が好きになった。『木の時間』が実はそういう内容。時間の上で漂流しながら根付く所を探すことができずに流れる人間は、木のように根づけるところを欲しがり、反対に、木は人間を見て自由を切望し、枝をもっと遠くに伸ばして葉っぱを揺さぶり散らすんだと思った。 (『木の時間』の監督意図より抜純)

『椅子の上の男(2014)』
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Q.『椅子の上の男』だけでなく他のドローイング作品にも、人が事物に閉じこめられている姿がたくさん見られる。
そのドローイングを描く過程で、『椅子の上の男』の話が作られた。クロッキー時間にモデルが動かないで座っている姿が椅子とまったく同じに見えた。それで、事物の外郭ラインをまず描いて、その形態によって歪んだ人の形状を中に入れて描いてみた。

Q. 作品に登場する人物が服を着ていない理由は?
服をうまく描く事ができなくて(笑)。それに服を描けば、性格が表われる。例えば、スーツを着れば形式的でちょっと硬直されたように見えて、スカートをはけば女らしく見えて…。服によって変わるキャラクターより、「人間自体」、人間の本然について話したかった。


『空き部屋(2016)』
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Q.今度は新しい作品『空き部屋』が出た。アヌシー国際アニメーションフェスティバルに上映が決まっており、すでに熱い関心を受けているが、どういう企画で作るようになったのか、どんな内容なのか。
実際、大きい筋書は 4年前に書いた。卒業作品で『木の時間』にしようか、この作品にするか悩んだけれど、‘木’についての話をずいぶん前から書いていて、『木の時間』を選んた。前の作品の延長線上にある作品なのだけれど、『椅子の上の男』のように一つの部屋の中で起こる話。
部屋は、その部屋の主人がどんな人なのか話してくれるようで。‘部屋’という空間、壁、門、窓、カーテン、物体など部屋の中にある要素を通じて人の記憶と痕跡について話す内容になっている。

Q. 『椅子の上の男』では俳優のソ・ヨンファさん、『空き部屋』では俳優のユ・ジテさんの声をきくことができる。 ナレーション録音をする方をどうやって選んで交渉したのか。
実はどんな人を選ばなければならないか感じが全然つかめなくて。 映画をやっている親しい先輩がたくさん手伝ってくれたんだけれど、イメージが完成すると、私の作品を予め見て、俳優の何人かを薦めてくれた。そうすると、その俳優が出る映画を探して声をまた聞いてみて決める。交渉するのも、先輩がたくさん手助けしてくれた。
ナレーションに関してもう少し話すと、初めは『椅子の上の男』のナレーションを仮録音をする時、男の人がやっていた。でも、主人公が直接話しているみたいで観客が判断がつかないようだった。 話し手が男を描いた作家だから。最終録音する時に女に替えたけれど、そうやって人物と話し手の距離がぱっとできた。

 Q. 今までの作品の中で一番愛着がある作品は?
本当に愛着がない作品なんてない。それでも一番愛着のある作品を挙げようとすれば、『木の時間』。学生の時は私の作品がどう見えるか、どう伝わるか、そんなに悩まなかった。その時は卒業してから、アニメーション監督になれるかどうか分からなかったから、やりたいように全てやった。 『椅子の上の男』からは、ちょっと観客を意識し始めたみたい。

Q. 制作する時、素材やアイデアはどこからくるのか?
アイデアは生活の中から得る方だけど(笑)。 スープの牛の骨のようにすごく長く寝かす。作品を構想してから少なくとも3,4年が経つと制作を始められるという気がする。アイデアノートが別にあるんじゃなくて、頭の中で考えがずっと発展して行く。そうやって、話したい話が充分に寝かされれば、制作を始める。

Q. 精神的スランプは?
フランスで『木の時間』を作る当時、韓国に制作支援システムがあるとは思わなかった。アニメーションをずっと作ることができるのかどうか確かではなくて、これが最後の作品になり得るという考えで作った。 それで『椅子の上の男』の制作支援を出す時、かなり切実だった。
『椅子の上の男』があまりによくできて、『空き部屋』を作り始める時、負担をちょっと感じた。でも今は 「どうせ制作は続けていくのに、あるものはうまくいって、あるものはうまくいかなかったらどうしよう」 と思ったりもする。自分がしたいことをすることが本当に重要なんだと思う。そうすれば結果が良くなくてもそんなに惜しくはならないんだと思う。

Q. これからの活動計画は?
今まで計5作、制作した。この作品が皆お互いに関連した話をしている。もうある程度したかった話をしたみたいだ。
他の主題に足を踏み出すため、1年くらい研究と実験をしたい。

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*『空き部屋』は花コリ2017短編プログラム1にて上映します。
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