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花コリ2016名古屋会場キム・ヘミ「Little King」監督トーク録

名古屋会場トークイベントその2

5月28日(土)16:30短編プログラム1「色彩の中の秘密」上映終了後

ゲスト:キム・ヘミ(短編プログラム1『Little King』監督)
司会:西村嘉夫(シネマコリア代表)
通訳:田中恵美

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キム・ヘミ(以下 ヘミ):こんにちは。『Little King』を監督したキム・ヘミと申します。

西村嘉夫(以下 西村):作品を作るきっかけを教えてください。

ヘミ:この作品を作ろうと思ったきっかけは、私の夫が韓国ドラマ『正祖(チョンジョ)暗殺ミステリー 8日/정조암살 미스터리 8일(2007)』の制作に携わっていて、その時にこの正祖の物語や実際に舟で橋を作ったという話を聞いて、そのことが大変面白いと思い、すぐにアイデアが思い浮かんでストーリーを作りました。

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■『Little King/배다리뎐』2014/11:23/2D
舟で作られた浮き橋をめぐる、朝鮮の正祖王とある少年の物語。

Director's note
“孝(親孝行の心)”の思想は、古今東西を問わず人倫の大切な徳目の一つだ。
現代では急速に色あせていく“孝”。
その大切さを、この作品を通じて、もう一度考えてみたいと思う。



西村:今、ご紹介のあった『正祖暗殺ミステリー 8日』という番組なんですが、日本でも公開された『われらの歪んだ英雄/우리들의 일그러진 영웅(1992)』や、正祖を主人公にした『永遠なる帝国/영원한 제국(1995)』という映画を撮ったパク・ジョンウォン監督が、演出をされているテレビ・ドラマです。

ヘミ:パク・ジョンウォン監督は、私がアニメーションを勉強した韓国映画アカデミーで学校の院長をされていて、私の夫もそこで勉強しており、その縁で夫はパク監督の作品制作のスタッフとして参加することになりました。私がアイデアを得てこの作品を作ることになり、このように日本に来る事になりまして、とても不思議な縁だと思っています。

西村:実は、この作品は東海地方ともご縁があります。今回、英語タイトル『Little King』で紹介していますが、韓国語のオリジナル・タイトルは『배다리뎐/舟橋伝』となっています。色々調べてみますと、江戸時代、木曽三川(木曽川、長良川、揖斐川)は広い川で基本的に渡し船で渡っていましたが、将軍と朝鮮通信使が通る時だけは、『Little King』に出てきたのと同じように舟をつないで「舟橋」を作って渡っていたそうです。特に朝鮮通信使が渡る時は、異文化ですので、見物人が黒山の人だかりになっていたとか。正祖の時代より先に朝鮮通信使が始まっていますので、想像をたくましくすると、ひょっとすると朝鮮通信使の報告にヒントを得て、正祖はこの作品に出てきた「舟橋」を作ったのかもしれないですね。ちなみに、一宮市にある尾西歴史民俗資料館には当時の「舟橋」の模型が展示されています。

ヘミ:その話は初めて聞きました。

西村:アニメーションの中で、王様が米櫃に平伏していますが、その背景など教えてください。

ヘミ:今回出てきた正祖という王様の父親が政治的な争いに巻き込まれて、米櫃の中に8日間閉じ込められて餓死をするという、実際にあった出来事があって、その父親が亡くなった後に正祖が王位に就くわけですが、正祖はそういうことがあっても周りの人を恨むことなく周りと和解し合いながら国を治めていた、大変な名君として知られています。そういった王様の正祖が父親を恋しく想う気持ち、父親への想いをああいった大きな米櫃のそばで小さくなった王(正祖)がいるという場面で表現しました。

西村:偶然ですが、『王の運命(さだめ) ―歴史を変えた八日間―/사도(2015)』という韓国映画が、名古屋ではシネマスコーレ他で来週から公開されます。このチラシのひざまずいてる方が米櫃の中で餓死した思悼世子(サドセジャ)という、アニメーションに出てきた正祖のお父さんです。その後ろに立っているのが思悼世子のお父さん、正祖から見るとおじいさんになりますが、英祖(ヨンジョ)という王様で、この二人が仲違いをして父親である英祖が息子の思悼世子を米櫃に閉じ込めて餓死させてしまいます。なぜそんな事件が起こったのかという人間ドラマがこちらの作品を観るとよく分かると思います。この映画の監督は、以前シネマコリアで『黄山ヶ原/황산벌(2003)』という作品を上映したイ・ジュニクです。

■『王の運命(さだめ) ―歴史を変えた八日間―』
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西村:パンソリが本当に印象的な作品ですが、これは、最初にパンソリを録音してそれに合わせてアニメーションを作られたのか、それともアニメーションを最初に作ってアフレコ的にパンソリを録音されたのか、教えてください。

注:パンソリは独特な発声をする歌い手と、太鼓の奏者によって奏でられる伝統民俗芸能。『風の丘を越えて~西便制/서편제(1993)』、『花、香る歌/도리화가(2015)』などパンソリそのものをテーマにした映画もある。

ヘミ:パンソリを作るのとアニメーションを作るのは同時に進めていたのですが、後半にかかるにつれパンソリの方も徐々に作りこんでいって、最後はパンソリと映像をどういう風に合わせるかというのも、最後まで詰めて行いました。

西村:この作品はアニメーションで一作品、パンソリでまたもう一作品作っているようなものですが、制作費はどうでしたか?

ヘミ:CJ文化財団から2,000万ウォン(約180万円)の支援を受けて、1年間の期間をかけて制作しました。

西村:昔話風ですが、完全にオリジナルな作品ですよね。実在の人物を使って、新しい昔話を作られているのが、すごく面白いと思ったのですが、こういった作品にどんどんお金を出していこうという流れが韓国ではあるのでしょうか?

ヘミ:特に歴史的なものにという傾向はなくて、制作支援を受けるにあたり、企画書を出したら気に入られて私の企画が通ったということです。

西村:パンソリという韓国の伝統芸能、プラス昔話物というのはアニメーションでシリーズ化していったら面白いと思うのですが、そういった計画はありますか?

ヘミ:機会があったら作ってみたいですが、実は今回の『Little King』以外にもウサギが出てくる『水宮歌(スグンガ)/수궁가』という昔話に関連した作品を企画して支援に申し込んでみたんですが、落選してしまったので、しばらくは作れないかなと思います。

西村:この作品はインディ・アニフェスト2015でグランプリを受賞されたのですが、何か変化はありましたか? 韓国のアニメーション作家にとってインディ・アニフェストでグランプリをとる意味についても教えてください。

ヘミ:個人的には大きな意味がありました。この作品を作った時期というのは、なかなか成果が出なくて、これからもアニメーションを続けていこうかどうか、非常に悩んでいた時期で、今回受賞できたことで非常に力をもらった気がします。受賞したおかげで別の短編作品の支援も受けることができて、今、その制作に取り組んでいる最中です。また、グランプリをいただいたおかげで今日、この場に来ることができましたし、観客の方々に会えて本当に良かったと思います。

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西村:今年は中日新聞に「インディ・アニフェストでグランプリをとった『Little King』という作品の上映とキム・ヘミ監督のトークがある」という記事が掲載されまして、そうしましたら「この作品が観たい、監督のトークが聞きたい」という問い合わせがありました。短編で、ピンポイントで「この作品が観たい!」という問い合わせは、なかなかないので、これもグランプリの力なのだと思いました。



<質疑応答>

観客1:キャラクターが素晴らしいと思います。顔の形がデザインだけでなく、子どもは小さく、大人は大きく描かれていて、王様はもっと大きく描かれていました。キャラクターをデザインするにあたって、凝った点やお気に入りのキャラクターがありましたら教えてください。

ヘミ:ご質問ありがとうございます。キャラクターの大きさについてですが、主人公が子どもなので、子どもの視点で子どもの心から見える大きさというものを考えて、実際に見える大きさよりもお母さんや大人は大きく描き、王様はさらに大きく描くという工夫をしました。物語の後半で、王様が行列を作って歩くシーンでは、行列一行の服装や装身具は歴史的な資料を見ながら描く工夫をしました。

観客1:全編に黒い墨の霞がかった、フィルターがかかった映像だったと思うんですが、霞の部分が部分的に微妙に違っていたのですが、その辺の使い分けとか意図がありましたら教えて下さい。

ヘミ:全体的な色のトーンは、私がこの作品を作る時に、昔の歴史的な行列の絵などを参考にしたのですが、そういった昔の絵のトーンが古ぼけた韓国の伝統韓紙のような色合いでできていて、それを観て今回の作品の色合いに合っていると思い、そのような色使いを意識しました。

観客1:所々に墨のような霞がかかったフィルターのような手法がなされていたのですが。

ヘミ:水彩画で別途、霞のようなテクスチャーの素材を描いた後、それをスキャンして、絵の上にレイヤーとして重ねて、透明度を調節して効果をつけていきました。その意図というのは、昔の絵や古文書に霞がかかった部分があったりしたので、より昔の雰囲気を出すためにそういう手法を使ってみました。

観客2:こちらの作品は、昨年のショートショートフィルムフェスティバル&アジアで上映されていて、大変印象に残っていたのですが、その時にちょっと意外だったのが、部門がCGアニメーション部門でのノミネートだったのですが、実際この作品がどういった手法で作られたのか教えてください。


ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2015『Little King』予告編
トークで話題となった、霞がかったフィルター、舟橋を渡る行列、パンソリなどが確認できる

ヘミ:私自身も、なんでCG部門に入っていたのか、(日本語で)わかりません(場内爆笑)。絵を描く段階ではフォトショップとTVPaint Animationというソフトを主に使って、アフターエフェクトで最終的な編集をしました。

観客2:アニメーションの制作はFlashではなくて?

ヘミ:Flashは使ってないです。

観客3:とても工夫がされた作品を観ることができて、すごく良かったと思います。絵巻物で始まって、絵巻物で終わるという工夫がされていて、背景は筆で描いたような絵巻物の質感を感じられるものになっていたと思います。その一方で登場人物の線はペンや鉛筆で描いたような線で描かれていたように見えました。そうでありながら筆で描かれた背景と鉛筆で描かれたような登場人物が違和感なく見えたのが素晴らしいと思いました。違和感なく合わせるために苦労された点があれば教えてください。

ヘミ:背景はフォトショップで描いて、キャラクターはTVPaint Animationで描いていたので、ソフトの違いから線や絵の質感の違いが出ていたかもしれません。ただ、どういう風にそれを調和させていったかというのは、何をどういう風にしたというのは特になく、自分の目で観た感覚でできるだけ、それぞれの要素を調和させていこうと作業しました。

西村:どうもありがとうございました。最後に次の作品について教えてください。

ヘミ:現在『ソウル遊覧(仮題)』という作品を企画しているんですが、これは全く時代的な作品ではなく、現在のある家族がソウルを観光して周るというストーリーなんですが、ずっと仲良くほのぼの周っているわけではなくて、時々ものすごいケンカをしたりとか、時にはいい思い出になるようなことがあったりとか、家族がいろいろな経験をしながらソウルを観光していって、よりソウルを理解するようになって家に帰っていくという物語です。

西村:ありがとうございます。花開くコリア・アニメーションでは、各プログラムの冒頭でインディ・アニフェストのトレーラーを流しているのですが、そのトレーラーは前の年のインディ・アニフェストのグランプリを受賞した監督が作ります。ですので、来年の花コリではキム・ヘミ監督が作られたトレーラーが上映されることになります。どうぞご期待下さい。



キム・ヘミ(短編プログラム1「Little King」監督)
釜山大学美術学科で工芸を専攻した後、韓国映画アカデミーに入学。短編『Bad Dream』(2003年)、『Iron Boy』(2004年)、CHARAの歌詞からインスピレーションを受けた『Private Beach』(2007年)を発表。7年ぶりの作品『Little King』(2014年)でインディ・アニフェスト2015グランプリを受賞した。

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tag : 花コリ 名古屋 トーク録 韓国 KIAFA キム・ヘミ Little King 舟橋伝

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