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人形アニメーション『2人の少年の時間』チョン・スンベ監督Toyvilleスタジオ訪問記

今回のKIAFAスタッフによるスタジオ訪問は『どうしたの?/무슨 일이야?(2008)』から始まって、最近『行ってきます(2014)』と『2人の少年の時間(2015)』を制作したチョン・スンベ監督の”Toyvilleスタジオ”です。『2人の少年の時間』は花コリ2016短編プログラム2にて上映します。

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ストップモーションアニメーションの制作活動をし続けており、かわいいキャラクターの裏面に現実的な話を込め、柔らかさと鋭さを同時に合わせもつチョン・スンベ監督の作品世界とスタジオの話。さあ始まります!
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▲Toyvilleスタジオ内部

Q.Toyvilleスタジオについて簡単に紹介してください。
英語では「おもちゃの町」で、漢字では”土”に「異なる」の”異”を使って、「土異ビル」「異なった土で作った町」という思いから、名前をつけました。重い名前よりは面白い名前をつけたくて。2010年9月に弘益大学の近くでチョン・ミニョン監督(花コリ2013名古屋ゲスト『楽園』)の”CROCK HOUSE”と一緒にスタジオを使っていましたが、妻と金浦に引っ越した際にスタジオも一緒に移動しました。

Q.スタジオがかなり広いですね。スタジオでは何名働いているのですか?
普段は主に私と妻の二人で制作することを原則としています。でも制作支援を受けた作品を制作する時は、期間内に終わらせなきゃいけないし、支援金で仕事を生み出さなければならいので、フリーランスの人々と一緒に制作します。新しい人たちと一緒に作業をしてみると、二人だけで仕事をする時とは違って、利点が確かにあります。作業をしていると、その人なりのやり方があるのは当たり前だけれど、自分のやり方から逸脱した、異なったものを作る人をみると新鮮で、刺激になります。

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▲ストップモーションのセット

Q. ストップモーションを知らない読者のために、ストップモーションについて簡単な説明をお願いします。
ストップモーションは、その言葉自体の中に答えがあると思います。止められた状態で少しずつ動かしながら、その過程を撮って行くのがストップモーション技法です。最近は、けっこうインターネットやスマートフォンなどの媒体が発展しているから、ストップモーションを知らない人はいないと思うけれど。

Q. ストップモーションアニメーションを作るのにどの位、期間がかかりますか?
ピンキリで、登場するキャラクターが何人かによって違いますが、期間は予め決めておきます。 1年なら 1年、1ヵ月なら1ヵ月。デッドラインを決めてそれを守ろうとします。その決めておいた時間内で高い水準の作品を作らなければいけません。キャラクターとセットを作らなければならない時間、ストーリーボードを書く時間などを最大限守ろうと思うけれど、実は難しいです。 制作期間が予定より増えると、それによって撮影がより切迫します。 制作支援を受けると、提出期限を守らないといけないから、とにかくその時間内で作業をします。欲張ればキリがないです。

Q. ストップモーションを通じて一番具現化しにくい場面、または動きは何ですか?

キャラクターがたくさん登場する場面。人形は自ら立つことができないから支えが必要です。 支えを利用して立たせる動作がちょっと難しいと大変です。 そこにたくさんのキャラクターが登場したら、コマ撮りでは一番避けたい場面ではないか思います。 背景までエクストリームロングショット(一般的に遠い距離から広い範囲を描くために、高い位置から眺めた場面)でとらえなければならない場面なら、もっと大変です。 でも、そういうシーンは短編制作では出ないと思います。 実のところ、ストップモーションの場合、どれ一つ難しくない場面はありません。 一コマ一コマ、キャラクターに手を入れなければならないのですが1秒を作るために15枚撮ります(15フレーム)。普通は 29.97や 24フレームで制作をするのですが、私たちは15フレームを30フレームに増やして制作します。

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▲作品に登場するキャラクターの人形


Q. キャラクターを演技させるのに、キャラクターを動かしながら役として、ご自身が感じる感情がありますか。

ジャンルによって感じが変わるのはあります。陰鬱な話ならキャラクターと一緒に、私も陰鬱になります。 『行ってきます』を作る時は、薄気味悪くて怖い話なので自ら重くなったりしました。ひと足遅れて兎を探しに出たお父さん兎の感情は、私自信がその感情になると、兎の表情が出るから感情を入れようと努力するほど、私自らもそのキャラクターに同化しました。 『2人の少年の時間』には、余裕のある友達が登場します。設定上、ビリッケツのキャラクターなのだけれど、そのキャラクターが出てきて、あどけない姿を見せると同化されて笑いながら想像したりしました。一番先にキャラクターの感情が何なのかを考えなければならないので、その状況を考えながら演技をしなければなりません。

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▲コマ撮り撮影場

Q. 撮影は順番通りに進むのですか。 それともシーン(Scene) 別にまとめて進めるのですか。
普通はシーン別に進めます。順番に進められたのは『行ってきます』という作品でした。ずっと流れる形式の話なので空間が重なる場面がなくて。 背景が同じで人物だけ他の場面なら、時間的に他の場面でもすぐに撮ります。 映画でロケをする際に、ロケ地を借りて、その場所で起きる場面を一気にまとめて撮るようにストップモーションもセットが組まれていて、人物だけ違うなら時間の節約上、他の場面でも一気にまとめて撮ります。そういう部分では実写映画に似ていますね。

Q. シーンが完成してからも後で気に入らない時があるようですが。
たくさんあります。 3Dの作業は動きを撮っておいたものを発展させたり修正したりすることはできるけれど、ストップモションは撮っておいたものを捨てなければならない。朝早く出て、お昼前に撮っておいたものを、ご飯を食べた後、また見ると感じが変わります。それで午後にその場面をまた撮る。一言で言うと朝撮ったそれまでのカットにNGが出たことになります。
会社ではオーナーが決めて推進するけれど、インディーズの作業では作家自らがそれを決定しなければならないということが一番難しく、大変な事だと思います。自分で作ったものはすべて大切だけれど、それを客観視してまた作業を始めなければならないので。

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▲『行ってきます』制作中のチョン・スンベ監督

Q. アニメーション学科出身ですか。
公州にある今の韓国映像大学でアニメーション科に通いました。デッサンは中学生の時からしていたと思います。美術の先生が知り合いの画塾の講師を紹介してくれて。その先生が当時、授業料も受け取らず手伝ってくれました(笑)。その時初めて美術に関心を持つようになりましたが高校入学後、少し休みました。
そうして高校2年生の時、中学の時にやっていたことを思い出して美大に行きたくなりました。美大に行けば面白そうで、美大での大学生活を夢見ていました。美大準備のために美術の予備校に通ったけれど、そこでマンガ本をかなりたくさん読みました(笑)。マンガにはまり、マンガを描こうと思いました。 当時、概念としてはマンガ、アニメーションという区別よりは‘マンガ映画’というカテゴリーで考えていました。
しかし大学に進学してかなり大変な時間を過ごしました。一度もやってみたことのない「キャラクターを描く、キャラクターを動かす」という課題が出て、アニメーションに対する興味を失いそうになりました。

Q. たくさんあるアニメーション技法の中でストップモーションをすることに決めた理由は?

学校でストップモーションをやっている先輩を見ていたし、教授がストップモーションに関する映像をたくさん見せてくれました。そうして偶然‘アードマンスタジオ(40年の伝統を誇るイギリスのアニメーションの名家)’の作品を見たのですが、土が動くというのがとても不思議でした。 あの時、粘土のアニメーションを始めて知り、粘土をどのように動かすかについて知りたいと思いました。そんな感じでストップモーションに魅かれ、制作し続けています。

Q. 好きなアニメーション監督やスタジオは?
宮崎駿監督も好きで今敏監督も好きです。 日本のアニメーション監督は素敵だと思います。大衆と作家精神を合わせるような。 ストップモーション界で挙げれば、ティム・バートン監督。 実写とストップモーションを自由に行き来していて表現の幅が広くてすごい。一番初めに影響を受けたのはアードマンの監督たちでしたが、実際に制作をしてみるとティム・バートン監督がすごい、ということを実感しました。

Q、実写映画を撮る機会があったらやってみたいですか?
実写映画も大好きです。 なので短編映画をたくさん見ます。 やってみたいことは多いですが簡単ではないですね(笑)。 昔は劇場アニメーションやTVシリーズを作らなくちゃいけないという考えもあったけれど短編作品を制作してみると、ずっと短編ばかりやってますね。

Q. 制作をしていると、長編で作りたい話があるようですが。

ありますが大規模な制作をやったことがないので、手が出ません。 ストップモーションをしてみると限界を感じます。その限界は資本に比例しますが、条件も良くなくて制作支援金も限界があるから最小限の舞台で見せなければならない。舞台が本当に大きければいいけど、話はある程度縮小させます。 そうしたら話が広がらない。
しかし、ずっと試み続けなければと思っています。 実は韓国にはストップモーションの長編作品がありません。前に『子犬のうんち/강아지 똥』という作品が中編で出たことがあったし、その後で『ラッキーソウル』などの作品が企画されたけれど制作期間と制作コストがとても大きくて、投資が円滑に進められませんでした。 個人的に韓国国内にもストップモーションの長編作品がもっと出てほしいと思っています。


『ヒュンダイ自動車プロモーションフィルム』

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▲ヒュンダイ自動車プロモーションフィルム・メイキング映像

Q. 24フレームや 29.97フレームを使ってみたことはありますか?
ヒュンダイ自動車のCMを作った時、24フレームで撮影しました。もちろん自動車は本物の自動車を使って撮影しました。今まであれほど大きいものを動かした事がありませんでした。物体が大きければ大きいほどアニメーションは簡単だけれども、たくさんの人々と作業をしなければならないことが大変でした。 思い通りの動きの程度が、多くの人が動かすとコントロールできませんでした。とにかく24フレームは時間がたくさんかかります。 何コマも撮らなければならないから。でも映像が滑らかになるという長所があります。

Q. CG などを使うより本物の自動車を利用してストップモーション技法を使う利点は?
思い通りの効果がありましたか?

そのCMのコンセプト上、人々に驚きを与える要素が必要でした。本物の自動車でストップモーションを撮った事がないから、人々がメイキング映像をみただけでもびっくりするだろうと思いました。もちろん3Dにすればすぐできる作業でしたが、それだとあまり面白くなかったでしょう。

Q. 撮影後の反応は?
皆さん不思議に思われました。でもTVCMではなく海外プロモーションのCMで、ドバイでバイヤーにだけ見せる映像だったので…。内部的な決定事項だったので仕方ないいことですが、もったいなかったです。


『行ってきます』

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Q. 『行ってきます』は実際の事件からアイディアを得たのですか?
実は以前までは、ああいった無惨な事件に対して関心がありませんでした。実際に子どもを育ててみると、あの記事が目に入ってきて。そういうものについて考えているうちに、大人の無関心が事故の発端なのではないか、と考えるようになりました。大人の無関心の中に子どもが犠牲になるという社会的な殺人についての話をしなければと思いました。4人の動物のキャラクターが出てくるけれど、皆同じ大人だと思えばいい。 鹿のママは自分の子だけ大丈夫ならいいというキャラクターで、スキーをするヤギはただ、その場を避けたい。キツツキは仕事ばかりをするだけで。でも彼らもオオカミの家に行くと剥製にされたまま展示されている。 彼らもやっぱり被害者だった。被害者だったにもかかわらず、これを黙認し他の被害を作る、循環する話をしてみたかった。本当は、この作品を始めたのは自らに対する反省の意味もありました。


『2人の少年の時間』

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Q. 『2人の少年の時間』の一人の少年はJeon’s Bakeryというパン屋の主人になります。チョン・スンベ監督の ‘チョンJeon’のようだけれど、パン屋さんに設定した理由は?
特別な名前をつけるのが曖昧で。 パロディーにするのもちょっと…。 パン屋さんになりたかったこともあります。 パンという素材で、ある一つの味を出すのが匠のようで。それで私の名前を入れてみました。見えないと思ったけど… (笑)。

Q. 話の素材やアイディアは主にどこから?
周りから探して、友達からも探します。 『2人の少年の時間』の企画は、久しぶりに高校の友達に会ったことから出てきました。 16年ぶりに友達に会って、とても良かったんです。 でもその友達が昔の姿とはあまりにも似合わないことをしていました。 その友達の中で優等生もいたし、勉強ができなかった友達もいました。 でも昔の出来不出来とは違った生活をしている姿を見たら感慨深くて。 その日、友達とお酒を飲んで家に帰り、勉強の出来不出来はそんなに重要ではないんだなと思いました。 幼い頃は成績が全てだと思っていたのではないか。 そういったいろいろな考えが重なり、『2人の少年の時間』という作品を作ろうと思いました。

Q. 『2人の少年の時間』は、もともと、もっと長い作品だったのですか?

そうです。 キロギアッパ(子どもと妻を留学先に送り、韓国にひとり残って仕送りをする父親[通称:キロギアッパ]キロギは雁)の話も出てきます。 でもそこまで話すには簡単ではなくて…。 それでストーリーボード上でカットしました。 作品に一生懸命走り続ける人物が出てきます。 その人物がキロギアッパです。 家にある写真がキロギアッパをほのめかします。その後、対照的にパン屋の家に幸せな家族写真が出てきます。 パン屋の家族たちもパンを一緒に食べる場面があったのだけれど、時間も足りず、またセットや人形を作る時間があまりなくてその場面はカットしました。

Q. 『どうしたの?』 、『行ってきます』、『2人の少年の時間』、この3つの作品は皆、疎通の不在、危ない社会、無限競争時代など現代社会に対して批判的な主題意識がこもったアニメーションですね。

そうです。 社会的なイシューがより目立って、よく扱うようになったのだと思う。 『どうしたの?』のような場合は、周りに子犬を飼う人がたくさんいて。 それでその子犬についていろいろ考えている時に 「彼らは家に人がいない時、何をしているのだろうか」と気になって。飼い主が家に帰って来るとすごく嬉しがる。 それで子犬が可哀想だと思って。
周りを観察していると話のアイデアが出てきて、その話は、なぜか社会的な話になる。 作品を始める時、キーワードと問題提起から出発する。 どうしてこの作品を作らなければならないか、この作品がどうして必要なのかに対する問題提起から出発すると、どうしても社会的な問題が目に入って来ます。

<活動計画>

Q.監督はYou Tubeオンラインチャンネルを持っていますね。

これからも制作したものをメイキング映像を含めて、持続的にアップしていくつもりです。意志はあるけれど、怠けていてかうまくできていませんね。2014年くらいに作ったと思うけれど。

Q.制作をしていないときは、主にどんなことをしているのですか?
主に外注の仕事をたくさんしています。2010年には郵便局のカレンダーの仕事をしました(カレンダーの写真に必要なキャラクターを制作)。また講義にも行っています。昨年2学期から弘益大学に講義をしに行っています。映像関連の学科は世宗キャンパスにあります。主に人形制作、ストップモーション撮影、ストーリーボード、映像編集についての講義をしています。

Q.学校で、ストップモーションアニメーターを夢見る学生はいますか?
他のところではあまりいないけれど、この授業では3~4名ほどが、関心があり作ってみたいと思っている学生がいます。なにしろ皆、ゲームの方や3Dの市場が大きいから、3Dだけやろうとする子たちが多いけれど、作家的なマインドがある子たちはストップモーションをやろうと思う子もいます。

Q.そういった学生にはどんな話をしてあげるのですか?

1年でも2年でも、やってみて、合っていれば続けて、そうじゃなければ就職してもいいと言っています。どうせ20代だから何でもやってみることができる時期だと安心させる話もたくさんします。学生はとても不安がります。卒業後、すぐ就職できなかったら、まるで永遠に就職ができないかのように。そんなに焦って考える必要はない、と。どちらにしろ夢見てきた道だから、経験してみる必要があると思います。たくさん考えてみても選択する時間は十分にあるし、また、その間に作った作品を持って会社に就職をしてもいいのだから。20代の時はやってみたいものを主にやってみろと助言します。もっと深く話したい学生がいればスタジオに見学に来いと言います。どうやって制作しているか見せようと。私は、制作したいと思う子がいれば手助けをしてあげたい。私ができる作業方法に関することならいくらでも共有してあげたい。

Q.これからの活動計画は?(または今年の活動計画は?)
一旦、目の前に差し迫っているものは育児問題のようです。育児の合間に制作をするつもりです。学生を教えるには勉強もしないと。一日一日を充実した暮らしにしようと思う。あまりにも遠くをみると大変。これからは遠くをみない生活をしようと思います。

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Q.作品を制作する時、お子さんからたくさん影響を受けますか?
特別な父親になろうという思いはないけれど、私がやる仕事をあとで子どもが育った時に観られるようにしたいですね。子ども達が中心の話を作りたいと思います。『2人の少年の時間』は競争についての話ですが、始めは幸せとは何かについての質問からでした。『行ってきます』は社会的な恐ろしさ、危険要素についての話を後からでも見せてあげたかった。これからは子どもたちに堂々と見せてあげられる作品を作りたいです。

Toyvilleスタジオ公式サイト
You Tubeチャンネル
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tag : 2人の少年の時間 花コリ

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